2014年8月24日(日)13:00〜18:30
東京工芸大学 中野キャンパス
企業・団体:37名
学校関係 :57名
(幼稚園1、小学校7、中学校6、高等学校6、専門学校6、
大学24、特別支援学校3、教育委員会3、学生1)
冒頭主催者である公益社団法人 日本広告制作協会(OAC)鈴木理事長より、
「広告制作業界を目指す学生さんも減っていると聞きます。根底にあるのは幼児・児童期からの学びの場に問題は潜んでいないか、今日はそんなことも聴けると思っています。
また我々の業界でも新卒の入社試験をすると圧倒的に女性が優秀で男性は見劣りする傾向があります。しかし、男性も必要なわけで延び代のあるものを残しています。最終的には「人間力」に行きつくのですが、さてその「人間力」を学校教育で養えるのか。様々な課題がある中、先生方の苦労には頭が下がります。どうか今日を切っ掛けに先に進んで行けるような会になることを望んでいます」
と挨拶があり、続いて今回の催しに中心となって動いていただいた武蔵野美術大学就職課の上野さん(OAC理事でもあります)による全体趣旨説明が行われました。
三澤氏からは、小・中学校の美術授業数の減少、授業内容や美術教員数の変遷などの基礎情報を話された。例えばと、国語の授業が月に24時間行われているとすると、美術は12時間。すると経営と同じかもしれないが、同じ学校で国語の先生が多く働き、美術の先生は休んでいると見える。そこで何が行われているかと言うと、美術の先生は他の学校を掛け持ちすることになる。これが進んで行くと、美術の先生の新規採用はほとんど無くなり、非常勤の先生が増える構図となる。
また、「想像できる時間=余白」の減少が顕著になっており、これから創造性を質・量ともに提供できるかどうか厳しい状況ではある。時代とともに変化していかなければいけないが、現在は木切れや石ころなど昔は自分たちで探してきてそれを細工したり、色を塗ったりしたものだが、木切れや石ころ自体が売られていてお膳立てが出来ている時代。クリエイティブっていろんなものから想像して、創っていくものだったが、中々難しい時代になってきていることはまずご理解ください。
以上、三澤氏による前提講演に引続き、小学校から専門学校、大学、企業までの講演が始まった。
学校教育を至れり尽くせりの遊園地から子どもたちが遊びを考える原っぱへ。予定調和と仮構性の解体。過去のパターン」や「常識」ではなく「私」を拠り所にした教育活動に取り組み、教師も生徒も役割を演じるのを止め、全体を通して新しいモノ、コト、価値を創り出す人間を育む体系に向かいたい。
2006年から2011年の取組み→神奈川県立近代美術館や上田市の美術館(「無言館」)との連携。自分は絵を観てこう思った。でも、○○ちゃんは同じ絵を観てこんなふうに考えていた。
そんな対話を通して美術を鑑賞していく。
美術館との連携教育
http://www.group-rough.net/museum/report.html
「鎌倉なんとかナーレ」プロジェクト
学校がアートスペース。体育の先生は体育で芸術表現するし、教師自身も自己回復。
http://www.group-rough.net/museum/pdf/nantoka2014.pdf
「はみだし部品」
学校社会に違和を覚える小学生集団「はみだし部品」が、絵画・工作・写真・映像・身体表現等の表現をとおして社会の人々と交流を図るプロジェクト
http://museum.group-rough.net/?cid=67115
「鎌倉市・上田市 姉妹都市交流」プロジェクト
大人のお膳立てではなく、子ども主体のプロジェクトに大人は巻き込まれる覚悟が出来るか
http://www.group-rough.net/museum/shimai.html
最後に高松先生は、「図工・美術」の存在意義は、社会とつながるための手段であること。
「学校」と「社会」をつなぐメディアであると締めくくられました。
小学校の美術時間数の推移
中学校の美術時間数の推移
2010年4月設立の、美術・音楽・舞台表現学科を設ける芸術専門の都立単位制高校。
佐藤校長も教育現場の現状について資料を基に説明していただきました。
「目に見える成果を出せと言われる」のが多くの学校の現実。なかなか現状は難しく、一般の高校では
皆さんが仰るように美術の授業時間数は減少し、進学重視の状況。
その上で、佐藤校長は問いかけます。
「物に触れる、物を作る、物を描く、物を捉える、物を組み合わせる。
用具や素材を理解する、選択する、活用する。
創造する、課題を通して考える、自分を見つめる、美を追求する。
構想する、苦労する、工夫する、試行錯誤する、色と形で表現する。
伝統文化を実体験する、感情を表現する、素材を編集する。
人を理解する、社会を理解する、問いかける、作品の良さを感じ取る」
このような図工や美術の学びが学校から存在しなくなったら、代わりにどのような学びが得られるのだろう。
最後に佐藤校長は下記のように締め括られました。
矢崎氏からは、都内専門学校数校を回ってアンケートを実施した内容が紹介された。
三澤氏からも資料をまじえた現状の説明。そして美術教育において「身体的(感覚的)体験=幼児・小学校期」から「言語(概念的)体験=中・高校」へその双方をうまく取り入れていきたいと語ります。特に、芸術体験+言語化による体験は中高で伸びてほしいといいます。それは例えば対話による鑑賞活動や共同制作、ワークショップを通じて芸術と出会える場を創りだしていく必要がある。
ワークショップ形式の授業は、(旅するムサビでは学生がどんなワークショップを行うかを企画)その体験を通じて体験した子どもたちも、そして企画した学生もココロにも何かが残るはず。徐々に成長し大人に近づいていくと感動と知識や経験がリンク出来てきたほうがよりココロに残りやすい。このような体験が何かを生み出すチカラになっていく。
学生にとっても、自分たちだけでは社会性は身につかない。対話するチカラを身に着けつつ、どのように生きていくかを考えてほしいと思う。
このような取り組みを通じて、社会に生きる開かれた個を育てていきたいと思っています。
クルマ文化は新創世記へ。若者のクルマ離れが進んでいる中、より魅力的であり続けなければならない。そのためにも、カーデザイナーは「お客さまに感動を与えること」を主眼としなければならない。
カーデザイナーの仕事は、1.コンセプト立案、2.アイデア開発、3.立体造形、4.データ作成、5.製品化フォローと長い年月をかけて創りあげています。
そしてカーデザイナーに必要なものは、人間力=人と人の間の力、人間力に包含されたデザイン力だと考えます。旺盛な想像意欲、好奇心と洞察力、柔軟性と集中力は必要。その上でデザイン力の構造=発想力、表現力、評価能力とセンスが大切。器を拡げればデザイン力も大きくなる、専門力+人間力は鍛えれば備わると思います。そのためにトヨタでは、OJTにて「自発力」を要に据え、ポジティブシンキング、パッション(創造魂)、パートナーシップの重要さを理解すべく、段階を持って教育にも当たっています。カーデザイナーとしての初期は技術の壁。その巾を拡げ、そして極める。その後スペシャリスト(トップガン)か、ゼネラリストかを各々選択していく。
菅原氏は言います、デザイン力をつけるのは中高が旬であると。
社会においてどんな人になりたいか、自分はどんなことが出来るか、そんなことを考え出す時期に、考え抜くチカラや創造性を養うことは重要。この実現のためにも、学校のみならず、国・産業界・地域社会・家庭を含めた社会全体の支援体制が必要だと思います。と締めくくられた。
そこで出た発言を紹介します。