新潟県村上市には中世以来の鮭食「塩引鮭」が息づいている。 朝日飯豊連峰を源とする清流三面川に毎年鮭が遡上するが、藩政時代には乱獲で激減。そこで産卵を助ける分流を造り、世界初の自然ふ化に成功して漁獲高を回復させた。 鮭は塩をすり込んで寝かせ、冷たいシベリア季節風にさらす。 やがて発酵熟成して旨味成分が増し、新巻鮭にない風味が生まれる。 料理は内臓から骨、頭、皮、エラまで何と100種。生き物を尊び、何も捨てない一物全体食が貫かれている。 育てて獲る。収穫後は時をかけ、手塩にかける。 創意を凝らし食膳に載せる。厳しい風土と向き合い、知恵と努力で食を育くんできた村上。 自然と共生するサステナブルなフードデザインの姿が、遠い昔からここにある。
公益社団法人 日本広告制作協会(OAC)の
クリエイターの皆さんが再発見した、
7 つのニッポン・デザイン作品をご紹介します。
REDISCOVER NIPPON DESIGN
風土に根ざす発想
新潟・村上の塩引鮭
フェロールーム(株)村松 秀哉(CD&D)
(株)東京グラフィックデザイナーズ 菅原 孝司(Ph)
(株)エディターシップ 村上 健(C)
塩引鮭の映像はこちら
REDISCOVER NIPPON DESIGN
引き算の美学
ひび、大切に生きる。
― 金継ぎと日本の私たち ―
金継ぎは、破損してしまった陶器類を、漆でつなぎ合わせ金粉などで仕上げる日本の伝統的な修復技法。 私たち東京アドデザイナースは、この金継ぎを単なる実用の技術ではなく、傷を受け入れ、美しさへと昇華していく、日本固有の心の持ち方として捉え直しました。 長く使われてきた器と同じく、人もまた、必ず損なわれ朽ち果てていく。 けれど、完璧で欠けることのないものだけが、素晴らしいわけではない。 消すことはできない過去も、受け入れることはできる。 傷を負ったからこその輝きを、静かに誇ることもできる。 時の連なりを知り、辿ってきた道のりを味わい、これからを思う。 金継ぎと日本の私たちの生き方を、重ね合わせて描きます。
(株)東京アドデザイナース
小宮山 浩史(AD)/水野 亮(C)/佐々木 千穂、中村
優、鈴木 絹乃、鈴木 竣介
(D)/小宮千緒里(カリグラフィー)/山田 真司、内山
真(Ph)常岡 海央/坂梨 公紀(撮影アシスタント)/山根
国裕(Dir)/渋谷 弘和(レタッチ)/山口 敦(Md)
REDISCOVER NIPPON DESIGN
遊び心の系譜
角隠し
おツノ美学。
花嫁被衣(かつぎ)「角隠し」。 ハレを象徴するピースであるにも関わらず、男性中心主義や女性蔑視、さらには性を根拠とするケガレの概念など、その名の由来はなかなか不穏だ。 それでも花嫁たちは今日も祝福されるべき舞台でそれを被り、拍手と賞賛を浴び続ける。 そんな奇妙なコントラストに違和感を覚えてしまうから、知りたい。 いわゆる「伝統的」な思想と被衣の役割が、過去一世紀半ほどにわたり、どのように融合してきたのかを。 その変遷にこそ、角隠しの美学を発見できるかもしれないから。
(株)スタヂオ・ユニ
佐藤 昭一(CD &D)/樋口 牧子(AD &D)/松浦 圭(Ph)/中島 めぐみ(C)
REDISCOVER NIPPON DESIGN
先端と伝統の邂逅
鼠磁 工芸のモジュール化
「工芸」大国日本と 、「工業」大国日本。 手作業による繊細な技巧と、機械化による大量生産。 相反するイメージを持ちながら、そのどちらもが日本の文化と発展を支えてきた。 そんなこの国独自の二面性を邂逅する試みが、“工芸のモジュール化”である。 工芸品を、工業製品で分割・統合することで、見慣れたものや現象を、新たな視点で捉え直す。 モチーフにしたのはJ継手と呼ばれる塩化ビニール製の配管資材。かつて、すり鉢を水差しに、魚籠を花入れにするなど、多くの 『見立て』を茶道に取り入れた千利休をヒントに、ありのままの工業製品を、 日本人のDNAで 工芸的に再解釈することで、鼠色に鈍く光る、佗(わび)しい現代の花器が誕生した。
(株)京王エージェンシー 池田 純也(CD&AD)
(株)アクロバット 小西 佐保(D)/津久井 大樹(Cw)/山内 由子(Pr)
(株)ナッジ 浜井 望(Dir)/渋谷 祐樹(Ph)
鼠磁の映像はこちら
REDISCOVER NIPPON DESIGN
異文化受容と創造
スーパーカブ
新しい乗り物が
“暮らし”をデザインした
19世紀末に西欧で発明された自動車は、20世紀を迎え世界の産業・経済・社会を大きく変えた。 戦後の日本では、高度経済成長と共にモータリゼーションが爆発的な発展を遂げたが、中でも身近な乗り物として“暮らし”を大きく変えたのが“スーパーカブ” だ。 それまでのオートバイの常識に捉われず、使う人の便利と使い勝手を徹底的に追及した 新しい乗り物は、瞬く間に日本全国に普及して現在に至る。商用、自家用を問わず、スーパーカブはあらゆる生活シーンに溶け込み、日本のみならずアメリカを始め世界中で愛用され、今も人々の暮らしを“デザイン”している。
(株)東京グラフィックデザイナーズ
梶原鉄也(CD)/ 高橋博之(D)/ 星野友香(C)
REDISCOVER NIPPON DESIGN
異文化受容と創造
「おもてなし」
×「サステナブル」
「おもてなし」と言えば、滝川クリステルさんのパフォーマンスで多くの日本人の記憶に残っていますが、この言葉が持つ奥深さはあまり知られていません。 おもてなしとは表裏のない気持ちで相手を大切に思い、喜ばせること。 日本特有の風土から生まれた心を尽くす文化は、古来より紙という素材を用いて表現されてきました。 そして今、世界が紙の「サステナブル」な魅力に注目しています。 私たち広告制作会社もたくさん使う紙。 今回はシュレッダーされた紙ゴミを再生紙として利用し、おもてなしのプロダクトへ生まれ変わらせました。 紙とともに生きる私たちだからできること。 「おもてなし」と「サステナブル」を掛け合わせた、新たなニッポン・デザインを提案します。
(株)アドブレーン
葛西 健一(CD)/田中 暢(AD)/大森 廉(AD)/篠原
有佳(C)
REDISCOVER NIPPON DESIGN
遊び心の系譜
箱しばい
「紙芝居」、その原型は江戸時代の「写し絵」、または平安時代の「源氏物語絵巻」など諸説ある。 「写し絵」とは、横長の映写幕にロウソクで絵を映し出したもので、それが紙人形芝居の「立絵」に変化し、時代を経て昭和初頭には現在と同じ絵物語式の紙芝居に発展した。 その後、作家による出版作品として発展を続け、児童文学としても確立。いま世界へ広がり初めている。 「箱しばい」とは、日本の独自文化である伝統の「紙芝居」を、「箱しばい」として現代的に昇華させて表現した作品。誰もが聞いたことがある昔話の断片をミックスさせて一つのユーモアたっぷりなストーリーとなった「新しい昔話」である。
(株)博報堂プロダクツ
[構成・演出・語り・作品制作] 佐藤 翔吾
[演出補助] 新井 来歌夢/花園 直之
[演者] 新井 来歌夢/岩崎 楓/宮本 玲/山田 陽平
[演奏] 坂本 岳也 /花園 直之