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第五回「デザインのための紙・印刷・加工の講座2008」は、印刷の前段階において不可欠な要素である「プリプレスとカラーマネジメント」を学びました。いまやクリエーターが印刷所に入稿する原稿は、大部分がデジタルデータとなっています。デザインデータはもとより、写真やイラストレーションについてもデジタル化が進んでいます。あえて昔のような「版下」を入稿したとしても、印刷所内の制作プロセスがデジタルで進行することは間違いありません。このような時代の流れに応じて、クライアントからは、制作物を確認する手段としてオンラインでの出稿が期待されるようになり、現実に刷り物が介在しないやり取りが行われるようになりました。物品の移動を伴わずにコミュニケーションを可能にするワークフローの出現は、コスト面からは当然の要求であり、わたしたちもこの流れに対応してゆく必要に迫られています。
今回はデジタルデータがどのようにプレート(版)まで結びつくのかを、コダックグラフィックコミュニケーションズ(以下、KGC)とTooの協力により学びます。
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午前の部は、KGCの田嶋信介氏の「PDF技術について」からスタートしました。ポストスクリプト系のデザインツールから吐き出されたデータを、ワークフロー上で効果的に運用するために生み出された「PDF」。PDFが標準とされたことで、クリエーターの制作環境も、アプリケーションの動向に大きく左右されることになります。続いてTooの草加健児氏に、デジタルツールの販社の立場から、OSとアプリケーションの変遷をふりかえりながら、クリエーター側の対応について語っていただきました。草加氏は安定した制作環境を求める心理は当然のこと、と前置きをしつつ「新しいツールが備えている機能は、以前の複雑な工程をワンボタンで解決してしまうこともあります」と指摘。枯れた技術の安定性にこだわることの「不幸」を訴えました。
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ふたたびスピーカーは、KGC田嶋信介氏に戻り、スクリーニング(網点の発生)技術についての講義とカラーマネジメントの講義が昼食を挟みながら行われました。特にカラーマネジメントは、オンラインプルーフ(=紙を介在させない色校正)を実現するためには無くてはならない要素で、今回の企画の目玉です。カラーマネジメントは、純技術的に色についての水準をそろえる手段です。専門書や雑誌の特集で頻繁に扱われるものの、なかなか腰をすえて取り組む時間がなく、なおざりにしていることが多いのではないでしょうか。こうして専門家からきちんと説明をいただけることで、私自身もようやくあらましをつかむことができました。
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このあとは、会場を移動して実際にパソコンの前に座りながらプリプレスに関わる技術を確認していきました。
・カラーモニターのキャリブレーション技術
・高画質デジタルカメラの撮影実演
・上記画像をローカルにネットワーク転送して画質を確認
・商品化されているオンラインプルーフ・システムのデモ
印刷・紙・加工で高付加価値を追求することをオフェンスとするならば、プリプレスとカラーマネジメントはディフェンス的な位置づけとなります。つまりは、高いクリエイティビティをアピールするための「両輪」であるといえるでしょう。(宇田)
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