THE ORGANIZATION OF ADVERTISING CREATION
OAC 社団法人 日本広告制作協会
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■『デザインのための紙・印刷・加工の講座2008』
  第六回「環境にやさしいデザインのために」

日 時 2008年9月26日(金)

第六回の『デザインのための紙・印刷・加工の講座2008』は「エコロジー」をテーマに取り上げました。
いまやエコロジーは、当たり前のように求められる「制作物の機能」のひとつです。わたしたちもクライアントとの打ち合わせの中で「これはエコマークを作るのかな?」と、訊ねられる機会が多くなりました。2008年はじめの再生紙偽装問題が、印刷物の環境性能についての関心の高まりにさらに拍車をかけたように思われます。
こうした背景を受けて、印刷表現を学ぶことを目的とした本講座でも、エコロジーマークを中心とする印刷の「エコビジネス」について取り上げることにしました。 しかし本講座は、印刷産業が生み出す環境負荷の是非を語る場ではありません。「エコ」をビジネスチャンスとしてとらえ、印刷関連各社が提供できる「環境対策商品」を組み合わせ、どうお客様に提案できるかを考える機会とします。参加者が実務において、正確な情報に基づいた効果的な提案を組み立てることが、結果として環境負荷の軽減に結びつくことと考えます。
午前の部は、プリンティングアドバイザーの樋口宗治氏による「クリエイタ−のためのエコビジネス」と題した基調講演です。
まず、「地球温暖化の現状とその原因の考察」という環境問題の基礎的な情報からはじまり、印刷が環境に及ぼしている影響をお話いただきました。樋口氏によると、印刷分野の環境負荷は、紙・インキ・生産工程の順に影響が大きい、ということで、エコの観点からも「紙選び」は重要項目です。
続いて「エコロジーマーク」の種類と使用法を、樋口氏に詳しく解説していただきました。エコロジーマークは私たちがエコビジネスに取り組む際のガイドラインであり、クライアントへのプレゼンテーションの意味でも有効な指標となります。さらに、エコロジーマークの誤用事件や、環境対策にはトレンドがあるということ、企業の立ち位置によって「好みの環境対策」が生じること、両立し得ないマークの組み合わせがあることなど、エコロジーマークの使用には正しい理解が必要であると教えていただきました。

午後の部は「○○にできること」というタイトルを設定し、紙・インキ・製本・デジタル印刷・印刷という印刷に関わる5つの分野から、それぞれ「環境対策商品」についての取り組みをお話いただきました。
環境対策商品は、基本的に代替品の提案であり、環境負荷が指摘される素材やプロセスを回避できるよう置き換えたものです。午後の部は、環境対策商品の正しい知識を持ち、上手に組み合わせることで、より魅力的な「エコ提案」ができる、というヒントをいただく貴重な時間となりました。
各分野の講演者
「紙」青柳晃一氏(株式会社竹尾/写真上段左)
「インキ」武田一孝氏(東洋インキ製造株式会社/上段中)
「製本」 中村健一氏(有限会社中村断截所/上段右)
「デジタル印刷」 奈良 誠氏(コダック株式会社/下段左)
「印刷」 根立 隆 氏(錦明印刷株式会社/下段中)
最後に、興味深い話題を紹介しておきます。 以前はR100マーク(100%再生パルプ紙)とソイシール(大豆インキ)がついていればエコ対策は万全といわれたものですが、今ではすっかりありがたみが薄れているそうです。そのきっかけは皆さんもご存知の偽装事件と、大豆インキが当たり前になってしまったためだとか。
では、今おススメのエコロジーマークは?と質問したところ、紙→「FSC 森林認証紙マーク」非・違法伐採パルプを証明することができる、インキ→「ノンVOCインキ」揮発性有機化合物(VOC)を含まないため、インキ印刷→「バタフライマーク」水を使わず環境負荷の少ない印刷であるから、といった回答をいただきました。
しかし、これらのマークは条件が厳しいため、R100マークやソイシールよりも使うのが難しくなっています。森林認証紙はそもそも絶対数が限られており、バタフライマークは登録されている工場で印刷しなければ使えません。この厳格さこそが「差別化」につながるということなのでしょう。
こうしたトレンドの変化を見ると、エコロジーマークを適切に効果的に使用するには、正しい知識と継続した情報収集が不可欠といえます。(宇田)

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