1.これからのデジタルコミュニケーションの考え方
これまで広告業界が盛んに行ってきた“消費される広告キャンペーン”や“カタログ的なオウンドメディア”は、今後、「生活者の便益につながるもの」「生活者との関係性構築につながるもの」といった、新たなサービスや付加価値の提供へシフトしていかざるをえない、と阿部さん。
これからのデジタルコミュニケーション開発において重要なポイントは(1)REALITY、(2)BIG IDEA、(3)CO-CREATIVE、(4)TECHNOLOGY であると提言。事例として、スキー場を丸ごとソーシャル化してユーザー発信型の集客に成功した「EPIC MIX」などを挙げて世界的なトレンドを紹介。
そして私たちがWeb制作において意識しなくてはならないキーワードとして、認識を変えるのではなく、現実を変えることが重要。
と阿部さんは言い切る。
2.コミュニケーションデザインの重要性
文化もライフスタイルも多様化した今、当然だがメディアも多様化している。企業のコミュニケーションも、これまでの「画一的・一方通行」→「多彩・双方向」に変化すべき。企業や団体は、いかに生活者と向き合い関係性を築いていくかを考えなくてはならない。
ターゲット論もしかり。もはや世代や性別などのデモグラのみでセグメント化する時代は終わりつつある。
これからのコミュニケーションでは、生活者のシナリオやシチュエーションを踏まえてタッチポイントやチャネルも設計していく必要がある。さらに、ユーザーがそのサービスを利用する理由はどこにあるのか?ユーザーにどのような体験を提供し、どのような価値を感じてもらえるのかを検討する必要がある。とのこと。
トータルなユーザー体験を設計する。
それによってユーザーが得られるものは何か?
世の中には常に多くの競合があり、いかに継続的に商品やサービスを使い続けてもらい、ファンになってもらうのか?それを考えていくことが重要、と阿部さんの弁にも熱が入る。
3.デジタルデバイスの変化と留意点
主に「iPhone」と「Android」という2強の戦いになっているスマートフォン市場。
スマートフォンやOSのグローバルなシェアと国内のシェアを比較するなど、国によってそのトレンドや普及状況が違うことを指摘。もっと世界へ目を向けていきましょうと提言。
4.Webサイト制作の流れと協調型プロジェクト
Webサイトは構造的なもの。レイヤー1「戦略・施策の検討」、レイヤー2「機能要件・コンテンツ要件」、レイヤー3「情報構造の設計」、レイヤー4「画面構成・インタラクション」、レイヤー5「ビジュアルデザイン」という階層になっており、下の階層から、ひとつひとつフィックスして積み上げていく必要がある。(したがって、進捗の際、下の階層の変更は大幅に手戻りが発生する原因となり、リスクが高まる)
Webサイト構築のプロジェクトは、「アウトライン企画」→「プロジェクト計画」→「戦略・施策策定」→「要件定義」→「設計」→「開発・テスト」→「検収テスト」→「カットオーバー」というステップで進められる。ワンパクでは、この要件定義フェーズの完了までは、プロジェクトマネージャー(PM)とプロジェクトメンバーによるミーティングで進行していく。
プロジェクトメンバー全員でディスカッションを行い「その場で合意形成し、次回ミーティングへと進めていく」この ディスカッション&コミットメントがプロジェクトで最も大切な部分である。
プロジェクトはクライアント側のメンバーも含めてのものであるという意識をつくり、ドキュメントを作成するのが目的ではなく、要件の合意を形成するのが目的。
だから、プロジェクトの進め方は、メンバー全員によるワークショップ方式。として、要件決定までのプロセスを見える化する。
5.プロジェクトデザイン=プロジェクトの見える化
そもそもプロジェクトって何?
誰のもの?何故やるの?
その問いに対して阿部さんの回答は、
プロジェクトはクライアントのビジネスの課題を解決するための期限とゴールを設定し、それにひもづく成果物などをつくる取り組みと単位である。
プロジェクトマネジメントとはゴールに導くための手段や手法を用いて管理する行為をいう。
と明確。ポイントとしては、クライアントと制作会社が一緒に考えましょう!
一緒にやりましょう!というスタンス。
プロジェクトとは設計(デザイン)するものである
=タスクとプロセスの見える化
プロジェクトを設計するまえに不明点を明確にしておくことが大切
◎プロジェクトの目的
◎達成すべきゴール
◎スケジュール、制作物など
◎効果指標(KPI)、測定方法
◎クライアント内部の体制
◎企業のコンプライアンスなどの制約
◎インフラ(サーバ、システムなど)
◎運用体制・サポートなど
※よくクライアントから「SEO対策がしたい」「SNSを使いたい」など
目的として出てくることがあるが、これらは手段であり目的ではないので注意が必要。
プロジェクトを設計するときに必要となることは何を、誰が(誰と)、いつまでに、いくらかけて、どのように進めていくか
WBS(Work Breakdown Structure)とガントチャートというプロジェクトの設計図をつくることでスコープが明確になる
ここで実際にワンパクの案件で阿部さんが作成したWBSを見せながら解説。
プロジェクトの最初の段階では80項目程度のタスクだったのが、終了時には約160項目のタスクになっていた。(この事例からもWBSを作成していれば、かかったコストの増加分の正当性が証明できるとのこと)
WBS作成のメリット
(1)どんなタスクがあるか明確になる
(2)各タスクをいつまでに終わらせる必要があるか明確になる
(3)各タスクの依存関係が明確になる
(4)クリティカルパス・マイルストンが明確になる
(5)タスクに対応するメンバーのアサインが明確になる
(6)予算感、コスト感が明確になる
(7)全体のスケジュールに無理がないか明確になる
WBS作成はプロジェクト成功への一歩であり礎である。
クライアントの信頼を獲得する上でも大いに役立つ。
プロジェクトの体制をつくる
Web構築プロジェクトはさまざまな知識や技術が必要であるだけでなく、多くのタスクとプロセスを管理しながら進めなければならない。そのため、どんな体制にするかがプロジェクトの成功を左右する要因になる。
プロジェクトの計画のスコープに基づいて、バランスを考えた体制をつくる必要がある。
●アウトプット品質
●リソース
●予算・スケジュール
このあと、阿部さんよりデジタル・インタラクティブ制作における実際の職種の紹介や、小規模なプロジェクトの体制のメリット・デメリット、大規模なプロジェクトの体制のメリット・デメリットの紹介があり、講演を終えた。
質疑・応答
阿部さんの講演が終わり質疑・応答の時間になると、多数の参加者から活発な質問が寄せられた。概略を以下に紹介すると…
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