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OAC 社団法人 日本広告制作協会
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■経営部会セミナー

「デザインの仕事はどうあるべきか」

7月の経営部会セミナーの講師は、ロングライフデザインをテーマに独自の活動をつづける「ナガオカケンメイ」氏。デザイナー視点で消費の現場を考えたショップ「D&DEPARTMENT PROJECT」を日本全国に展開するほか、渋谷ヒカリエ8Fに地域デザイン物産美術館「d47 MUSEUM」を開設、デザイン視点での観光ガイドブック「d design travel」を発刊するなど、その活躍は縦横無尽。
そんなデザインの仕事を自在に広げるナガオカケンメイ氏のキャリアのスタートはグラフィックデザイン。不動産のカタログ・チラシづくりを出発点に、日本デザインセンターへ入社し原デザイン研究所の設立に参加。その後独立し、現在のデザイン活動家へと自らのスタンスを進化・発展させてこられている。
グラフィックデザインの枠を超え、社会とデザインの関係を見つめているナガオカケンメイ氏に、ご自身の仕事を通して、デザインの可能性やデザイナーのあるべき姿についてお話しいただいた。

デザイナーという職能への疑問「生活者を向いてデザインをしていきたい」

18〜35歳まではグラフィックデザイナーとして仕事をしてきたが、ある時デザイナーとしての仕事に疑問を持ち始めた。とあるリサイクルショップの裏を覗いたときに、家具や雑貨がゴミの山になっていた光景を見て、そのほとんどがデザイナーによって作り出されているもの、この状態で自分はこれからもデザインを続けていくのかという疑問を自分自身に問うたのがきっかけであった。
デザイナーも医者や弁護士のように社会に必要な存在になるべき。これまでの自分を振り返った時、「自分はデザイン業界に向けてデザインをしてきたのではないか」と思い、これからは「生活者を向いてデザインをしていきたい」と考えるようになった。

D&DEPARTMENT PROJECT

今のような百貨店のイメージではなく、誠実にモノづくりをしている人たちのストーリーを伝えるというための百貨店を目指したいと思い、スタートした。現在11店舗を展開。
テーマはロングライフデザインで、ネット通販を含めストーリーをつけて売っている。商品構成にはルールがあり、世界のロングライフデザイン、日本のロングライフデザイン、その土地のロングライフデザインを扱うというもの。その土地らしく進化変化させたいというモノの原石を探し出すということがテーマとなっている。

ロングライフデザインを研究する

日経デザインで「つづくをつくる」という連載を続けており、ロングライフデザインには作る、売る、流行、続くという4つのハードルがあると考えている。これまで取材してきたカルピスや日本フィルハーモニー楽団等は、皆それぞれ共通点がある。メディアの取材よりも自分自身がメディアになっていくことであったり、創業者の決めたブランドルールを貫いていたり、架空ターゲットを設定していなかったり、デザイナー名を公表しない、デザインで勝負しない等々、競争的ではなく独創的な発想を持っているのでおもしろい。

60 vision

1960年代からとった60(ロクマル)ビジョンの代表作としては、カリモクの椅子を復刻。60の名前も刻まれているが、メーカーが自分たちでブランドを確立し販売できるようになった暁には、60の名前は外していってほしいと考えている。こちらとしては、あくまでブランド構築の副産物として、デザインの仕事を受注している。ブランドはユーザーと育てていくものであり、原点と新しいを並走させていくことが必要だと思う。そのメーカーのデザインの根拠を整理することが60ビジョンの考え。

d47museum

渋谷ヒカリエの8Fで展開しており、47都道府県の魅力を常設展示するという企画。一堂に並べて展示することで、日本のデザインの魅力が良くわかる。47都道府県という共通のフォーマットを使って色々なテーマを投げかけることで、日本の物産というものを若返らせたかった。日本らしさを浮き彫りにする、役に立つデザインミュージアムを目指している。

d47食堂

d47食堂はそれぞれのD&DEPARTMENTにも入っている、47都道府県の食文化をテーマにした定食屋。47都道府県の人たちと食にまつわる定食を作っていくことをテーマとしており、定食という定番デザインで、食の文化をプレゼンしようという考え方を持っている。 必ず現地で確認した食材や調味料を使って提供しおり、実際に美味しいと思うが、それは料理人がいいわけではなく、いい食材といい調味料を使っているからだと思う。

d design travel

観光をバージョンアップしようというテーマで観光雑誌を作っている。選定のルールを明記し、その土地らしいこと、その土地の大切なメッセージを伝えていくこと等、いくつかの条件を設定し、それらをクリアできないと掲載しないことにしている。また編集の考え方もあり、自費で客として利用する、取材申し込みをしない、感動しないものは取り上げない等ジャーナリズムの精神に乗っ取って編集している。前提として、今も続く観光スタイルは50〜60年前の半端なく古いものであり、これを疑わないと前に進まないと考えている。そのままの魅力をデザインでわかりやすくワクワクさせることをやっていかないとならないと思う。現在20冊目の7号を作っており、あと9年かけて47都道府県分の雑誌を作ることになっている。

d school

ロングライフデザインを生活者やデザインの卵達に教えるというもので、生活の原点的なことを皆で学び、食や工芸の勉強会を行っている。

used

続く価値をしっかり見定めて、そして価値を作っていくというusedの活動をしている。例えばGマーク取得の商品を買い取り、それを再販売したり廃棄された服を再度流行色で染色して販売したりといった展開をしたり、Life Stockというまだ使える在庫を有効に使う提案も行っている。
そして、「本当に価値のあるデザインは再利用され続ける」というのがロングライフデザイン、そしてD&DEPARTMENTのメインテーマである。
今回の経営部会セミナーはナガオカケンメイ氏のネームバリューもあり、早々に定員締切をせざるを得ないほど人気となった。デザイナーの枠を超えた氏の精力的な活動領域を目の当たりにし、我々が日々向かい合っているデザインとは、そしてデザイナーという職能は何か、ということを客観的に再考させられる良い機会となったのではないだろうか。

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