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OAC 社団法人 日本広告制作協会
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■経営部会セミナー

11月の経営部会セミナーの講師は、CM好感度の歴代最高記録を樹立した「au三太郎シリーズ」で2015年クリエーター・オブ・ザ・イヤーに輝く篠原誠氏。
いま最も旬なヒットメーカーといわれる篠原氏は、大学の授業でマーケティングに興味をもって電通へ就職。広告をつくりたいとはまったく思っていなかったとのこと。そんな篠原氏が広告づくりと真摯に向き合い、悩み、積みあげてきたクリエイティブの手法・進め方についてお話しいただいた。

「アイデアとゴールの関係について」

アイデアを作る

三重県美杉村という田舎に生まれ、同級生は6人、兄弟3人という環境で育った。それ故に広告もTVCMしか知らない生活であったが、上京後大学でマーケティング=商売に出会った。これは自分にとってはとても新鮮であり、常に気になるのはその商品が売れたかどうか、モノが動いたかどうかであった。
マーケティングに携りたく営業志望で電通へ入社したが、なぜかクリエイティブ局に配属されることになった。単純作業の仕事に悩んでいた頃、その時の上司であったコピーライターの友原氏に、「あらゆる仕事には意味がある、その意味は自分で作ればいい」という言葉をかけてもらった。つまり仕事の行き先は自分で決めるということだと気付かされた。これが今も自分の考え方の礎になっている。

「こうなったらいいな」ジャンプ

オリエンがあった時に一番最初に何を考えるかというと、「こうなったらいいな」ということを考える。例えば「バカ売れすればいいな」とゴールを決める。そして更に「その前にこの商品やサービスが消費者にこう思われたらきっとバカ売れするだろうな」と設定をする。これを「こうなったらいいな」ジャンプと呼んでいる。
その他にも、「どうやってやるか」何を言うか」「どう言うか」ジャンプがあり、もう一つ大事にしているのが「さきっちょ」ジャンプで、タイミングは企画時と制作時の2カ所ある。制作時においては、一番最後ギリギリの定着のところでもう一度ジャンプするタイミングがあり、それが大事だと考えている。また、企画時においては、コアアイデアから入るのではなく面白いなと思うことから入るなど、自ら制限をかけると意外なアイデアが出てくる。
この5つのジャンプはチャンスであり、全部を同時には難しいがそのどこかでジャンプをすればいいと思っている。自分の中では、ゴールである「こうなったらいいな」ジャンプだけは一番最初に考えるが、あとは順不同で順番などは決めておらず、大事なのはそれらがきちんと当てはまっているかどうかであり、これこそがクリエイティブディレクションだと考えている。

CM事例の紹介も

au三太郎シリーズ

auのCMは、最初はブランド広告の自主プレ競合がきっかけであった。そこで考えた「こうなったらいいな」は、愛着がわく会社=オモかわいい存在。いじられ役だけど、あいつがいるとなんか面白いなと突っ込まれるような存在になれないかなというところに加え、桃太郎などの古い話を崩すことで「新しい自由」という既成概念を壊す表現ができればと考えた。
また、手法としてはラジオのあの親近感がわく感じをテレビCMでやることで、オモかわいい奴を表現できるのではないかと思い企画をたてた。かつて上司から「コピーは下手だけどセリフは上手いな」と言われたことが自分の中ではお守りになっていて、この三太郎シリーズもセリフで勝負しようと思い、ラジオCMのようなテレビCMを意識して制作した。ブランド広告用で制作をしたつもりが、結果的にはサービスCMの方で使えないかという話になり、社長決裁も通ってとんとん拍子に進んでいった。
シリーズCMを制作するにあたって気を付けているのは、期待感(伏線)と変化球。伏線としてかぐや姫や陸ガメ、竜宮城、乙姫、一寸法師、鬼などを次々に投入してストーリーを繋げていった。変化球は浦島太郎の歌、金太郎の鬼退治などシリアスな場面を織り交ぜ、伏線と変化球を混ぜていくことで次につながる予告編としても成立すると考えている。

ニュートラルでいること

au三太郎シリーズは良い評価をいただくことが多いが、その裏にはひょっとするともっと大きな大正解が潜んでいるのかもしれないと考えている。その為に大事なことは、色々な物事に対して常にニュートラルでいるということ。制作の過程において会社やクライアントから様々な意見がある中で、否定せずに一回飲み込んでやってみると実は思いのほか上手くいくことがある。これは間違っているとかダメだとか端からから決めつけずに、ニュートラルでいることでより正解に近づけるのではないかと最近強く思っている。
広告に答えは無い、という話がよくあるがそれは全く逆で、広告に答えはたくさんあると考えており、だからこそ常に考えて続けていかなくてはならない。5つのジャンプの話をしたが、アイデアの作り方とはただひらすら「考える」ことだと思っている。考え抜いたことは嘘をつかない、という意味ではスポーツと変わらないだろう。

現在の広告業界トップランナーである篠原氏の講義はとても聞きやすく、受講者一同あっという間の90分であった。コミカルかつ柔らかな物腰で話される一方で、氏の考える広告の意義や制作に対する熱い情熱に、強い共感と勇気をもらった内容であった。
また、アンケートでも参加者全てが「大変よかった。ヒントや参考になった」と回答していた。

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