2010年以来、2回目のご登壇のサトナオさん。前回は著書「明日の広告」に基づいたお話しでしたが、今回はその後どうなって、これからどうなるのかのお話しです。
二極化/分断した現状の再認識
従来の広告は強制的に見せる、見ろ見ろ!でした。で、見る側もおおそうか、そうかと納得していました。でも、いまでは一人ひとりの個人の気持ちを考えて、コミュニケーションする時代。
○ 一人ひとりとのコミュニケーションの時代
商品ありきの広告から、生活者ありきでコミュニケーションする時代になっています。
だから、生活者の身になって丁寧にお渡ししなくちゃいけません。
従来のキャンペーンだと、マーケティングをして、クリエイティブが一生懸命キービジュアルやキーコピーを考え、そのうえでメディアを決めていました。
クリエイティブが強かった時代です。
現在では、十人十色の方々に対するマーケティングを行い、だとしたらこのメディア、あのメディアと考え、表現に関わらずアイデアを通してコミュニケーションする。一人ひとりの綿密に関わる時代。
○ 情報砂の一粒時代
さて、現在は情報がそれはもう砂粒のようにある時代。情報があふれかえっている時代です。いくら広告を打っても、スルーされがちです。情報の99.996%はスルーされ、0.004%のみが残る。ほとんど伝わらない。絶望的に伝わらない時代。砂の中の一粒が「おおい!ここだ、ここだ」と言っても、砂が多すぎてどこで、どの砂が言っているのか、何を言っているのか、そのくらいならまだいいですが、全くスルーされています。
ではどうすれば伝わるか。それはまた後半で。
○ テレビも観ない、スマホとネットの時代って本当?
今回の広告はスマホに絞って・・・なんて提案することもあるかもしれませんが、本当にそれでいいのでしょうか。
ネットに日常的に触れる層とネットにほとんど触れていない層の「情報環境が二極、分断化」しています。
情報に関して感度が高い人は、イノベータ―(新し物好きで、すぐ飛びつくタイプ)が2.5%、アーリーアダプター層(比較的早い段階で受入れちゃうタイプ)が13.5%。
この合わせて16%が情報感度の高い層。残り84%は(段階はありますが)情報感度の低い層。この情報感度の高い層は、ネットも日常的に観ている層。
でも残り84%はスマホにしても、Lineとメールとゲームくらい。テレビは良く観ている。マイルドヤンキーって言葉が以前言われていましたが、東京以外で週末にはショッピングセンターやカラオケ、ボウリング、ファミリーレストラン。本や新聞はまず読まない。情報がそんなになくても楽しみはある。そんなタイプの方々に何かを伝えるときに、「いまはネットの時代だから」というより、TVCFのほうがまだまだ有効。
東京に暮らす人は情報感度の高い人は別人種と考えたほうがいい。
選択肢が多いと選べない
アメリカコロンビア大学のアイエンガー教授の「ジャムの実験」では、24種のジャムを置いた売場と、6種類のジャムを置いた売場を設置して比較すると、24種類の売場より、6種類の売り場の売り上げが大きかった。
○ パレートの法則
2:8の法則です。何らかの2割が、全体の8割を生み出している。売上げの8割は、全体の2割の顧客で占めている。などと使われます。
・SNSのヘビーユーザーの2割が、利用時間数の8割を占めている。
・ブログを書く2割のヘビーユーザーが、全体の8割のシェアを持っている。
・月1回以上利用するアプリ数:ヘビーユーザー18個(82%):ライトユーザー4個(18%)。
先ほどの情報感度の高い人16%:情報感度の低い方84%
新規の顧客獲得に目を向けがちだけれど、2割の既存顧客が売り上げの8割を占めると考えると、既存顧客を大切にすることが重要。
なぜファンベースが必要か
さて、情報“砂一粒”時代。世界中から届く様々なコンテンツに勝てる気がしない。
バズらせてなんていうけれど(「Buzz」クチコミ)そう簡単にはいかない。
ではどうするか。そのヒントは、
「友人、知人を介せば伝わる。友人知人が話せば興味を持つ」
「あいつが言うなら、そうなんだろう」
競馬に興味は無いけど、「競馬面白いよ、今度の日曜行かない?」と言われたら、「まあ、お前がそう言うなら、一度行ってみっか」
どこから来たか判らない情報や、知らない人からのクチコミ情報より、「あいつが言うな ら」は効果的です。その際には押しつけじゃない、こんな感じが大事。
・自然なおすすめ
・本音のおすすめ
・友人への親切なおすすめ
・心からのおすすめ
さとなおさんは、映画や歌舞伎も大好き。でも、でもFacebookなどのタイムラインに
流れて来ただけだと、やはりスルーしていた。でも友人が、インド映画の「きっと、うまくいく」や歌舞伎の「ワンピース」を取り上げていた。これを見て、インド映画は歌って踊るんだろうくらいのイメージだったが、そのおすすめで観に行き感動したそうです。 また「ワンピース歌舞伎」も友人がそれはそれは、感動したと長文で書きこんでいて、それではと観に行くと、世界中でも突き抜けたエンターテイメントになっていて、これも感動したといいます。
友人からの自然な言葉に接し、その友人に共感し、心が動き、行動に移した。
価値観が近い友人のおすすめ。この情報“砂一粒”の伝わらない世界で、最強の伝達手段になっている。
Facebookなどで一人の人の「友人」数は130人ほど。それでいくと100人の人があるイベントのことをSNSなどで書いたら、単純計算で130人×100人で1万3千人の人に情報が届き、さらにその先、その先と広がって」いく。
拡散は「濃い少数」からでも十二分に起きる。
情報感度の高い生活者に伝えるほぼ唯一の解は、最強メディアである友人・知人におすすめしてもらうこと。
でもでも、企業が伝えたいことを友人・知人が話してくれるなんて、まず無い。
ありえない。でも友人・知人は信用がおけるし・・・
企業にとっての友人・知人ってナニ?
新規顧客から既存顧客という発想転換
既存顧客。すでに企業自体や、企業の商品を良く知っていて、愛用してくれる人。ファンになってくれている人(2割のファンが売り上げの8割に寄与してくれています)。その彼らが、最強メディアの「友人・知人」におすすめしてく
れたらどうでしょう。
既存顧客(ファン)から周りに伝えてもらう。結果的にファンじゃない人にも、伝わっていく。ファンのLTV<ライフタイムバリュー:顧客生産価値(一人の顧客がその取引期間中に企業にもたらすトータルの価値。短期的な売上ではなく、生活者本位で長期的な価値と収益を考えること)>を上げて売上に繋げ、ファンを通じて、ファンでない人に態度変容を促すことも可能。
ファンはファン以外をファンにしてくれる可能性を持っている。
じゃ、ファンの人からファンじゃない人におすすめしてもらうには、どうしたらいい?
A. 社員という「最強のファン」に共感してもらう(まずは社内から)
B. ファンから愛される理由を精査し、フォーカスする
C. ファンをもてなし、贔屓し、共に育つ
D. ファンを発掘し、承認し、裁量を与え、支援する
E. ファンとの接点を見直す。事前期待を上回る
F. ファンとのストーリーを共有する。共創する
G. ファンとビジョンを分かち合う
これから先の時代、人口は減少し、物に対する執着も少なくなってくる。
新規顧客獲得が難しい時代になってくる。
また、良い人間関係を築けた方が健康で、幸せな人生だと感じているという調査もあり、今後高齢者になればなるほど、「つながり」は重視さえてくる。
まず既存顧客(ファン)を大事に!ファンにはもっとファンになってもらう。
以上で、さとなおさんのセミナーは終了。参加された皆さんからのアンケートでも満足感が伺えました。また数年後にもさとなおさんのお話しを伺えることがあると思います。その時、みなさんや時代はどう変化しているでしょうか。
今日のお話しを活かしながら、まずは既存顧客に更なるファンになってもらえるよう舵を取っていきましょうか。
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