本日は特定社会保険労務士の廣本氏を講師に、昨今盛んに取り上げられている「働き方改革」についての勉強会を実施した。廣本氏は今年3月に当協会で実施した「働き方改革」アンケートも事前に読んでいただいており、アンケート内容に関する点に関しても触れていただいた。。
働き方改革とは長時間労働の抑制のことなのか?
首相官邸が中心となって、「働き方改革実現会議」の第1回が開催されたのは2016年9月27日。
その場で安倍総理から、この会議では以下の点について今後話し合っていってほしいとの要望が出されました。
- 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善。
- 賃金引き上げと労働生産性の向上。
- 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正。
- 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題。
- テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方。
- 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備。
- 高齢者の就業促進。
- 病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立。
- 外国人材の受入れの問題。
その後、2016年末に「電通事件」が起こり、長時間労働に世の中の視点が移ってきました。
しかし、1番に挙がっていたのは「同一労働・同一賃金など非正規雇用の処遇改善」。
非正規雇用者の処遇改善を第一に、一億総活躍社会の実現に国として取り組んでいこうとなってきています。
なぜ働き方改革?
現在の日本では、経済成長が鈍化しています。
- 少子高齢化と人口問題
- 生産性向上の低迷
- 革新的技術への投資不足
国としては、経済成長を促すために、生産性を向上させ、労働参加率を高めていきたい。
そのために誰もが生き甲斐をもって、その能力を最大限に発揮できる社会を実現したい。
そのために先に上げた9つの課題を改善していきたいということらしい。
話しを聞いていて、開高健さんのコピーを思い出す。
『人間』らしく やりたいナ
トリスを飲んで
『人間』らしく やりたいナ
『人間』なんだからナ
- 「非正規」という言葉を一掃していく
- 長時間労働を自慢するかのような風潮・常識を変えていく
- 単線型のキャリアパスを変えていく
無期転換制度の開始<2018年4月(平成30年4月)以降> 来年です。準備しましょう。
有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。
通算5年のカウントは<2013年4月(平成25年4月1日)以降>に開始した有期労働契約が対象です。
(労働契約法第18条:平成25年4月1日施行)
有期労働者
パートタイム労働者、契約社員、派遣労働者など
*参考資料
長時間労働の是正
長時間労働は構造的な問題であり、企業文化や取引慣行を見直すことも必要。
モーレツ社員という考え方自体が否定される日本へ向かうべきである。
今後法改正になると・・・
時間外労働の上限規制は、月 45 時間、年 360 時間とする。
ただし、一時的な業務量の増加がやむを得ない特定の場合の上限については、
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① 年間の時間外労働は月平均 60 時間(年 720 時間)以内とする
- ② 休日労働を含んで、2ヵ月ないし6ヵ月平均は 80 時間以内とする(*)
- ③ 休日労働を含んで、単月は 100 時間を基準値とする
- ④ 月 45 時間を超える時間外労働は年半分を超えないこととする
以上を労働基準法に明記する。これらの上限規制は、罰則付きで実効性を担保する。
さらに、現行省令で定める 36 協定の必須記載事項として、月 45 時間を超えて時間外労働した者に対する健康・福祉確保措置内容を追加するとともに、特別条項付 36協定を締結する際の様式等を定める指針に時間外労働の削減に向けた労使の自主的な努力規定を盛り込む。 (*)2ヵ月ないし6ヵ月平均 80 時間以内とは、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月のいずれにおいても月平均 80 時間を超えないことを意味する。
なぜ長時間なのか。
- 取引先への要望に応えるため
- 過剰なサービス(無理な要望でも応える ⇒ 仕事が無くなるのが怖い)
さて、どのように是正していくか。
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すぐには出来ない。時間をかけて。
*時短ハラスメント(ジタハラ)になりかねない
*労基署は是正に関して相談すれば待ってくれる
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トップの意識改革と社員の意識改革
* わかってないのは社員のほう?
* 残業ありきの働き方を見直す
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残業代は会社のコスト
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残業削減は目的ではなく手段
働き方改革アンケートより
- Q.労働時間の短縮は難しい?改善方法や現在取り組んでいることは?
- ○ まずは宣言。やってみる
- ○ 1日2時間、誰も邪魔をしない時間をつくる(週に2〜3日)
- ○ 採用の基準が、賃金よりも労働時間や休日に
- ○ 繁閑差をカバーする労働時間の管理
- ○ 内外への決意表明と取引先の巻き込み
- ○ 23時間以降の残業原則禁止
- ○ 10時間のリミット設定
- ○ 毎日15時に業務内容のチェックとフォロー
-
Q.得意際からの出向依頼
- ○ 派遣または業務請負になっていませんか?
- ○ 派遣には派遣法上、労働者派遣事業許可が必要
- ○ 偽装派遣は法律で罰せられる
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Q.社員の精神面での状況(社員でうつ病など、過去または現在いたか?)
- ○ 採用時の病歴確認は、個人情報ゆえ要配慮。質問票に任意回答等して設問を記載。健康診断の実施。
採用の可否は会社の事由。
- ○ 長時間労働が実際に行われていた際は、私的なことと複合的に精神面で追い詰められているとしても業務との関連性が認められやすい。
- ○ パワハラに関しては、自社内に限らず取引先も対象になる
- ○ 勤務時間のインターバル制度を設けることも
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Q.ストレスチェック制度に関して(「常時50人以上の労働者を使用する事業場」対象)
- ○ ストレスチェックは受検を強制できない
- ○ 結果は本人に通知(会社に通知する義務はない)
- ○ 本人の同意がなければ知ることはできない
- ○ 第一の目的は本人の気付き
- ○ 平成27年12月から制度化され、まだ医師の対応も十分ではない
こころの耳
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Q.労働時間管理方法
- ○ タイムカードの功罪
⇒ タイムカードは出退勤を管理しているもので、労働時間を管理しているものではない
- ○ タイムカードはリスクでもある
⇒ 未払い残業代の根拠
- ○ タイムカードの打刻ルールの徹底
- ○ 残業届出許可制
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Q.労働時間制度
- ○ 固定時間制
固定残業代
超過時間分を支払わないのは、大きなリスク。
「これ以上支払わなくてもいい」から働かせるのではなく、「この時間分は働かなくてももらえる」という意識の醸成。
固定時間制でも時間管理は必ずしなければならない。
- ○ 裁量労働制
裁量労働制の採用基準は厳しい。
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Q.就業規則
- ○ 届出を出すことが前提
⇒ 随時見直しが必要
- ○ 36協定は届出義務
⇒ 受理基準がだんだん厳しくなる
- ○ 就業規則は労務管理の基本
⇒ 労基署検査の対象
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Q.休暇を取得させたいが・・・
- ○ インフルエンザの時には、出社するなと言いませんか。それで業務が滞るのか。なんとかなっていませんか。
- ○ 事前の計画取得を検討
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Q.試用期間で不採用にしたいが・・・
- ○ 試用期間でも本採用を拒否するには段階を踏むことが必要。解雇と同様な対応が求められる。
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Q.くすぶっている社員がいるが・・・
- ○ 会社を辞める前になんとか対応すべき。個々の社員の性格にもよるが、会社として充分な対応を取るべき。
労働時間短縮案
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- ○ トップが内外への「残業ゼロ」宣言
- ○ 退路を断ち、取引先への協力を
- ○ 残業ありきではなく、生産性の向上を
- ○ 社員の意識改革
- ○ 「今日は何時に帰る」宣言
- ○ 休日出勤には上司が付き添う
- ○ 安全のために22時以降在社禁止
- ○ 定時の業務チェックと残業有無チェック
- ○ 外部からの遮断時間の設定
廣本氏からは、まずは何かをやってみよう!といいます。
残業代ありきの賃金に頼る傾向があるなら、そうではない体制を整える必要がある。
ライフワークバランスに関しては、これからの若い人のほうが関心が高いかもしれない。
一生懸命働いて、一生懸命遊ぶ。
仕事ばかり・・・それできた人々も、いまから考えて変えていくべきなのかもしれません。
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