経営部会・開催報告
経営部会杉谷部会長の進行で、会はスタート。
杉谷部会長
「電通の事件から2年が経ち、当社でも会社説明会などで感じるのは、広告制作会社への拒否反応やブラック企業だという印象は減っている感じがします。ただ、学生はゲーム会社などに目が向き広告業界を目指す数は減っているのではないかという、印象もあります。今日は、その辺りを4美大の就職課の方にお聞きしながら、制作会社側のお話も聞く機会になればと思います。まずは就職課の皆さんから、学生の現状等についてお伺いします」
東京造形大学
南澤氏・古賀氏
「2020年度卒の現状では、400名の卒業予定者に対し200名強が就職希望。広告制作会社への学生のイメージは、教員の影響が強く反映されている印象。以前広告会社や制作会社に勤務していた経験のある教員もいて、生の話を知っている分、その影響が強いと思います。また、最近の学生の特徴として広告制作会社の企業情報を調べるにあたって、この会社はどんな特徴があるのかなどまでは辿り着けていない感があります」
女子美術大学
樋口氏
「当校では、1学年600人のうち、就職希望は約7割の400人強。そのうち、就職が確定するのは9割といった状況。最近は、キャラクター業界を目指す学生が多くなっている印象。広告の世界を目指す学生は、今年に関しては多くなってきている印象があります。企業選びに関しては、昨年も申し上げましたが、選ぶ範囲が多く迷っている感じがします」
武蔵野美術大学
澤野氏
「1学年1,000人に対し、就職希望は約600人。そのほか、大学院進学が100人、その他は作家活動をしたい、フリーで行いたいなども相当数います。最近はインターンシップに参加する学生も増えており、企業側にもメリットはあるのではないかと思います。
広告制作会社を目指す学生の数は、減っている印象はありません。しかし、学生はどこを目指すべきなのか判らない印象もあるので、業界セミナー等を企画し、参加を促すものの、判らないからなのか、参加をためらっている学生が多いと思えます。企業側が間口を広くしてくれているが、学生自らが狭めているのも特徴かもしれません」
多摩美術大学
西田氏
「多摩美は、1学年1,100名(男性25%・女性75%)。就職活動は、3月1日の解禁を待って動くものがほとんど。広告業界を目指す学生は、今の4年生は低調だったが、2020年度卒業予定の現3年生は増えている。広告系16.9%・IT系14.9%・ゲーム系10.1%、ITゲームを合わせると25%となるが、広告系は10年前と比べても約2%の差でしかなく、必ずしも広告業界を目指す学生が減っているわけではない。先ほどから、情報の多さで企業や業界のことを知らない学生が多い。また知名度のある会社しか知らないので、知らない会社には足が遠のく。これからは1,2年次からインターンシップや説明会などに参加させていきたい」
杉谷部会長
「学生が情報の渦に揉まれている問題は、2年前も出ていました。また説明会に来た学生に、有名な制作会社やクリエイターの名前を聞いても知らない学生が多い。有名どころですらこうなので、われわれ制作会社も、どんどんアピールしていくべきだと思います」
この後、学校側への質問が始まりました。
杉谷部会長
「ここで参加者の皆さんに質問ですが、中途採用を行っているところ、インターンシップを行っているところはどのくらいでしょうか?」
杉谷部会長
「では、これから制作会社側のお話も伺っていきます。まず、(株)エー・ティ・エー水野社長。
水野さんは、採用の際に、最終的には直感的に決めると話されていたことがありますが、その辺りを含めお願いします」
(株)エー・ティ・エー
水野氏
「3月より、4美大にて会社説明会を実施。クリエイターの責任者とOBとで訪問し、会社の環境や作品などを説明。やはり、待っているだけでは駄目で、地道な活動が一番だと思う。
また、ポートフォリオをつくらせる制作会社はいかがなものかと思う。学生にも時間があるので、そこは日頃のものを観て判断。最終的には、その学生と話して、人間性をみて、直感的に決めていくやり方をしている」
杉谷部会長
「では続いて、たき工房富澤さんお願いします」
(株)たき工房
富澤氏
「社員の母校を中心に、業界説明会を10月から12月にかけ、12校を訪問。まずは当社に興味をもってもらい、受けてもらえる状態をつくっていく。その後、会社説明会1回、受験してもらえたら面接4回と段階を踏んで、その人を観ていく。結果、本年4月は16名を採用。また、最近ですが1dayインターンシップも行うことにし、人材会社に間に入ってもらい180名の応募があり、そのうちの17名に受けてもらった。時間は10時~17時。5人のディレクターが担当として、課題を出してみたり社内環境を観てもらう機会としている。なお、その中から5名が受験をしたいとのメールをもらっている。また、たき工房では学生向けに紹介パンフレットを作成しています」
東京造形大学
「たき工房さんもそうですが、OAC加盟社ではありあせんが、ジェ・シー・スパークさんもデザイナーの紹介や会社紹介をまとめた冊子をつくり各校の就職課に送っているようです。
また先ほどからのお話にも出ていましたが、入社3年目あたりのOB・OGの訪問は、学生にとっては親近感がわき、有効だと思います」
杉谷部会長
「では続いて、タイトルにも付けた優秀な学生とはどんな学生を指すのか制作会社の皆さんに聞いていきます」
(株)エー・ティ・エー
水野氏
「入社してから自学自習し、成長する人間も多いので人物による」
(株)博報堂プロダクツ
鍬形氏
「素直な子だと思う。ポートフォリオはあくまで入口で、課題に対しての説明の仕方や、人柄を重要視している。また、話は少しずれますが、最近地方の公立大学にもアプローチしています。また先ほども話にありましたが、OB・OGの1~3年目を同行させ、生の声で伝えると確かに学生は親近感を抱くようです。卒業生がいない学校も、同様に1~3年目の子を連れていきます」
(株)スパイス
東海林氏
「最終的には、やる気のある人。最終面接は社長である私が行いますが、そこでみるのは、ここで働きたいという熱意があるのかどうか。そこまでみても内定を出すと2~3人の辞退
があったりもする。また先ほど話に上がったインターンシップの件は、当社は以前から1週間の単位で行っています。また、当社でも地方の学校の割合は増えてきている」
武蔵野美術大学
澤野氏
「企業の人事担当の方と話していると、ポートフォリオの上手い下手よりも、そこを通して見えるその学生個人(人柄)などを見ているとの声を聞き、そういった指導が出来たらと思っている」
(株)博報堂プロダクツ
鍬形氏
「丁寧につくっている、ものづくりが好きなんだ、そうやって自分が伝わるものがよいのではと、もし学生に聞かれたらアドバイスする」
多摩美術大学
西田氏
「ポートフォリオに関連しますが、それ自体に正解はないはずなのにそれを求める学生が多いかもしれない。受かるためのアドバイスを求めてきがち。結果として、やってきた課題作品の羅列が多く、面白みやその個人が見えにくいかもしれない」
各大学とも、6月・7月に採用を決めるのがベストとの意見。しかし、そこで採用されなかった学生が質の悪い学生なわけではなく、どこかで最終面接までいっている学生もいる。夏休み明けの、9月には就職課として就職の確認ガイダンスやリスタートセミナーなどを行っており、後半だと9月・10月が次の山。そして、美大特有の学祭が終わる11月、卒業制作を終えるであろう1月と続く様子。
採用決定時期
大学側からの要望として以下の話があがった。
最後に、杉谷部会長より「制作会社も環境改善を図っている。各企業がそれぞれ魅力をアピールし、情報を提供していく必要を感じるとともに、就職課の皆さんからも本日の意見等を参考に制作会社をアピールいただきたい」とまとめ、意見交換会は終了した。
この後、軽食をつまみながら、さらに大学と制作会社、制作会社同士の交流はさらに深まりました。