経営部会・開催報告
今回は経営委員会の勉強会として講師は、アーティストとして活動する一方“artless Inc.”代表を務められている、コンダクター・オブ・デザイン 川上シュン氏を迎え、国内外において型にはまらない幅広い活躍をし続ける仕事の流儀、そしてその根底にあるブランドコミュニケーションデザインの領域について、お話を伺った。
artless Inc.
ブランディングエージェンシーartless Inc. 代表。23歳で独立。東京と京都を拠点にグローバルな活動を行う。活動領域は多岐にわたり、企業やブランドのロゴ・アイデンティティ、広告・キャンペーン、グラフィック、ウェブ、タイポグラフィ、APPS、UI、映像、モーショングラフィック、インスタレーション、エキシビション、空間演出、サインデザイン、インテリア、そして建築に至るまで、一気通貫したブランドデザインを行い、ビジネス視点によるリサーチや分析を組み合わせたブランディング及びデザインコンサルティングを行っている。
川上氏自身がバックグラウンドのない事、モノの見方についても自然体として無為自然でDesignを心掛ける事から社名由来となっている、今回のセミナーとして広告とDesign、広告とブランディングの観点から話をしてもらった。
グローバルデザインエージェンシーとしての立場から建築とデザインを融合し、グラフィックデザインをベースに、インテリアを融合させる事を目的としている。
グラフィックとWebをDesignという手法からWebは当然とし、グラフィックの中に包含し、コンダクトデザインにはWeb、グラフィック、デジタル(ON,OFFライン)含まれることから、会社としてはインテリアの人たちとの融合を目的として conducting design with architecture 基本的な考え方としてDesignがブランドをリードする。
《ビジネス×デザイン×カテゴリー》の公式で定義している。
デザインはビジネスにおける手法
デザインとカテゴリーが多ければよいこととなり、掛け合わせることでビジネスが拡大する
ベースはグラフィックとアーキテクチャとデザインを掛け合わせること。その為、グラフィックデジタルアーキテクチャは手掛けるべき事と考えている。
グラフィックはブランドアイデンティティ、ビジュアルアイデンティティ、ロゴ等であり、デジタルはWeb,APP,デジタルメディア等である。
2020以降はグローバルインバウンドマーケットをターゲットに業務を進めていく必要があり、日本のみではなく、アジア全域にて進めていくことを必要と考えている。
昨今の日本にはアジア人の英語教育が進んでおり、英語のコミュニケーションが増加している。
この様な環境からも国際的デザインが必要であるが、日本語直訳の英語では限界がある為、ネイティブの考え方を導入し、グローバルコミュニケーションとグローバルデザインとは国際的マナー、宗教、スタンダード等の理解が欠けていないかを確認していく意識が必要である。
その為、ジャパニーズグローバリゼーションとして、日本ならではの国際化をコンセプトにしている
それを実現するためのキッカケの一つが、Four Seasons Hotel KYOTOの仕事で、海外の建築会社と一緒だったが、彼らのコダワリなどは凄くオーナーともとことん意見交換を重ねていた。それを目の当りにし、図面を描けないと、建築・インテリア事務所と対等に話せないとも思い、それに強い人材を採用したり、パートナーを組んでいくようになった。
また、アイデアの源泉となるものは、ホテルなら「泊まる」という実体験を重ねること。
良いものを観ること。「あそこのホテルのアレ、良かったよね!」と言われても判らないと悔しいわけです。だから、日本の良いホテルにはほとんど宿泊しています。
ブランディング=長く続く資産になるように
そんな姿勢で取り組んでいます。
茶道とコーヒーの趣味が高じて立ち上げたブランド「artless craft tea & coffee」をオープン。
シングルオリジンの日本茶とスペシャリティコーヒーを提供するカフェとしてトータルデザインを行い、オーナーとして日々の運営にも携わっている。
日本の良さを感じさせながらもグローバルを感じさせることを心掛ける
赤坂の宿泊施設「ホテルリズベリオ赤坂」。
artless Inc.代表のアートディレクター川上シュンがサインやロゴデザイン、アートキュレーションを監修し、スタイリッシュな空間を演出。1階にはクラフトビール&グリルレストラン「135TAVERN」が併設される。ステーショナリー、サイン等を手掛けた。
1Fはベーカリーレストラン「koé lobby」、イベントスペース「koé space」、2Fはアパレルショップ「koé 渋谷店」、3Fはラウンジを併設した「hotel koé」で構成され、ショッピングからイベント、食事、宿泊まで、全館を通して多彩な体験を提供する「HOTEL in shop」。
国内外で活躍するクリエイティブチームを組むことにより、空間からプロダクト、グラフィックに至るまで、グローバルな印象を感じさせる上質なデザインに統一。
宿泊者のみが使えるバーの設計
Hotelのルームサイズを洋服のサイズと同じS.M.L、XL
先ほども触れましたが、アイデアの源泉は、自分自身の経験から、実体験、旅行等実際に行く事。
日本でよいという部分を実際に手に取る事での質感を感じる事が、次のプロジェクトでの新たな提案にもつながる事、社員との共通言語になる事から、社員の誕生日にはホテルの宿泊をプレゼント。
グーグルでは出てこない体感こそがアイデアの源泉
体験クォリティについては実際に体感しているから提案できる。
中国・鄭州にオープンしたデザインホテル
ホテル名:ミスト
ミスト(霧)ホテルの名に相応しく、施設名称や施設内サインは水の粒子が大気中に浮遊するかのごとく軽やかにメッセージを浮かび上がらせる。
このプロジェクトは途中からの参加であり、当初のコンセプトとして温泉のブースから霧があがる事から、デザインのアイデアをまとめ、アメニティにも一つのコンセプトを展開してる。
工場併設型のドーナツファクトリー「コエ ドーナツ(koe donuts)」。店舗デザインを建築家の隈研吾氏、クリエイティブをイラストレーターの長場雄氏が手掛け、京都に開店。
内装は「奥へと導く竹かごの空間」をテーマに、京都・嵐山の竹を使用した伝統的な六ツ目編みのかご572個を用いて、かごの網目から漏れるライトで店内に陰影をもたせるなど、エシカルかつ安らぎの空間を創出する。イートインスペースには65席を配置。テイクアウトにも対応。
プロダクトを持った時にPOPでキャッチーでインスタ映えしそうな和要素を活かしつつ一つにする事を意識した。
この時のプロジェクトについては、建築とデザイナーとイラストレーターがフラット リードする人はいなく、質量なしのフラット感で行う事で参加したメンバーの意見を出し合う事が出来た。
レストラン「abysse」とは、フランス語で「深海」「奥深きもの」を意味し、その言葉の意から深海までの深さと料理の味わいの奥深さの表現をコンセプトに、シンボルマークやブランドカラーを選定。インテリアデザインでは、海に沈んでいた古木を使用する壁面により深い海と深い森を同時に表現。
そして、ゲストがテーブル着いたとき、はじめに目にするのは封筒に入った手紙のようなメニュー。そこには繊細で特別なカラーの箔押しと、シェフからの感謝の気持ちも込めたサインも施した。
書体についてもオリジナルの物を使用。
アメニティには金を使おう
1% の印刷費をそして、10% から 1% の幅でおもてなしをする。
購入金額は 1% から 10 を使ってもらいたい
これを提案に盛り込むことを癖としている。
今年で3回目の実施となる。
川上氏ほか4名が発起人となり、日本向けではなく海外向けをコンセプトに行っている。
「DESIGNART」(デザイナート)は、さまざまなジャンルの垣根を超えて、デザインとアートを横断するモノやコトの素晴らしさを発信、共有してゆく活動です。
“東京の街全体がミュージアムになる10日間”
その後、川上氏は自分で辿ってきたきた道のりについても語っていただけました。
いつもグローバルって言っているのは、昔サッカーをやっていてイタリアリーグ、スペインリーグなど世界を観ていたことが影響しているかもしれません。すごい選手、すごいプレー、世界基準ってすごい!そんなことかもしれません。
しかし、本気でJリーガーになりたいと思っていたんですが、高校2年のときにこのままだとJリーガーには成れないと感じ、サッカーを辞めました。
その後、建築家やインテリアデザイナーに成りたいと思ったんですが、難しい。
それでグラフィックの世界に飛び込みました。
さて、建築家と仕事をしてみて思ったのは、建築家は建築物、建造物そのものを大事にし、サインやグラフィックを避ける傾向がある。そこで僕らは、サインを入れることによって更に良くなると提案していきます。話し合いながら進めていきます。
クライアントに主張できるデザイナーでありたいとは思います。
ブランディングやデザインに関する想いを熱く語っていただき、参加者にとっても貴重な時間となりました。