経営委員会セミナー・開催報告
今回はアサヒビール株式会社デジタルマーケティング部の玉手さんによるセミナー。打合せ時点から、参加者の志向、職種などを気にかけていただき、その方々に効くであろう内容を持ってきていただきました。
まずは玉手さんの自己紹介からスタートです。
玉手さんは、現場を最優先。『答えは常に現場と生活者の中にある』と考えているといいます。それを前提として、コミュニケーションが更に磨かれるのであれば、テクノロジーはどんどん使い、最新技術ドンと来い!の精神で取り組んでいらっしゃいます。そしてコミュニケーションの結果として、『相手が良い方向に変化した』かどうかの総量をご自身の判断基準にされているとのこと。
そして、玉手さんは『会社を良くすること』、『社会を良くすること』に価値を感じているそうです。
ファンづくりと売上にどう貢献するか。消費財をつくるメーカーとしては、直接販売するチャネルを持たないため、何かしらの間接指標を追いがちだが、そうではなく本当に『ビジネスに効く』ものを常に目指し、可視化し実行に移していくべきと考えています。
さて、そんな概略から玉手さんは本日のセミナーのゴールを、
〇 明日から皆様が「会社成長の原動力」となり、未来に向けて一歩踏み出せるようになること
〇 明日から戦略的リーダーシップを発揮できるようになること
と設定。
戦略的リーダーシップとは、例えばタクシー待ちの列が長くできていて、あなたの番が近づいてきたとします。
その時、『〇〇方面の方はいますか?』と声を掛けられるかどうか。恥ずかしいし、変な人に思われるかもしれない。
でもそのアクションを起こせる最初の人がリーダーだと思います。明日から皆さんが、その最初の一人として引っ張っていってほしい。
さて、概略だけでも刺激的ですがここから本題に。
人口減は皆さんのご存知の通り。更に2020年頃から65歳以上人口も減っていくようです。いま酒類を飲んでいただいている方も、高齢になると酒量も落ちるだろうし、その層自体が減っていく。また20代の若い層では、そもそもお酒を飲まない傾向になってきています。ビール会社としては危機的状況です。
また、購入手段も多様化し、ドラッグストアや通販にも目を向けていく必要が出て来ています。
人口は減る、購入手段も増えている中、ファンづくりをどう進めていくか。デジタルでコミュニケーションを取るにしても、あまりの情報量の多さに、消費者もその情報をどう取捨選択するか???
はたまたお酒のCMも欧米では規制がかかってきていて、日本でも今後どうなるかはわからない。
そもそも広告は見ない!
これを前提にしながら、どうコミュニケーションを図っていくか。
この問題って、ビール業界だけのもの?
色んな業界が抱える問題ですね。
漫画の「カイジ」とタイアップしたこの企画は、Twitterを活用。企画からアサヒビール社内で考え、実施したそうです。
〇 カイジくじ引き
〇 瞬冷フォトコンテスト
そしてつぶやいてくれた人には、全てに返答をすることにしたそうで、ホテルに泊まりこんでみんなで返信(ファンづくりって地道な積み重ねですね)。また、投稿に当たっては1本買わないと参加出来ない仕組みづくりをして、売り上げも担保。
従来応募シールをためて応募してもらっていましたが、もう少しで全部貼り終えるのに時間切れ、もう必要枚数が溜まっているのに送り忘れたり、様々なパターンがあると思います。
「もう少しですよ~」とか、「いっぱい飲むあなたなら、もう1枚応募ハガキどうですか」とか、コミュニケーションを図りたいんです。でも、ハガキだけだとそうはいきません。
そこでLINEを用いた応募方法を採用し、応募登録状況に合わせて個々にコミュニケーションを取っていくことにしました。少数で応募可能など、参加しやすい仕組みをつくりつつ、ヘビーユーザー向けの配信にはケース買いを促してみたり、その人それぞれの状況に合わせたコミュニケーションを図りました。登録者のログが取れることで、次のアクションに繋げることができたわけです。
また、誰にこのキャンペーンを告知すると良いかをAIを用いて予測したところ(必要のない人にその情報が渡っても迷惑になる)効果的な結果となりました。
以上の具体例を通して、玉手さんは語ります。
あなたは今NG何回目?
ビール会社で漫画をコミュニケーション手段にする機会は、いままでほとんど無かったことです。でも、これはいけると思ったので、上司に何度も頼み込みました。もしあなたが本当にやりたいことがあるなら、最初から駄目と諦めず、何度でもトライしてみませんか。
そのコミュニケーションで成立しているの?
ビジネスとしてコミュニケーションを図り、その成果を上げることが大切な以上、「その成果をどう可視化するか?」と「どう素晴らしいコミュニケーションをつくるか?」を必ず両立させましょう。
今までのように勘に頼っているばかりでいいの?
テクノロジーの進化に伴い、人間よりもAIが優れている部分もあります。ならばそれを受け入れて、AIを使う側に回り、慣れていこう。より良いコミュニケーションを築きあげるために。
そして参考になればとアメリカの学者のアンジェラ・リー・ダックワースさんが提唱する、成功のカギを握るのはやり抜く力であるという「Grit」理論を紹介いただきました。
GRIT(グリット)は、4つの言葉から作られた造語で、日本語では「やり抜く力」。
・度胸 (Guts):困難に挑み、逆境にたじろがない勇気
・復元力(Resilience):挫折から立ち直る力
・自発性(Initiative) :率先して物事に取り組む力
・執念 (Tenacity) :どんなことがあっても物事に集中しつづける能力
先ほどの「あなたは今NG何回目?」にも共通しますね。
さて、ここで玉手さんは「休憩中に考えてほしいのですが、ハズキルーペの広告は好きですか?」と投げかけました。
どんな話になるかは後半に。
皆さんが仕事をするにあたり、一人で全ては出来ないので協力しながら事に当たるわけです。
でも、何をしたいのかわからないままオリエンするクライアントや、担当レベルでは良かったのに、突然現れてひっくり返す偉い人、などなど仕事を取り巻く環境に左右されるのも実際ではないでしょうか。
この3社で仕事をした場合、お互いに理解し合いながら仕事を進めているでしょうか。この相互理解が機能していなければ、その仕事(プロジェクト)は、うまくいきません。
でも、これって大部分は元が駄目なのでは?多分95%はそうかもしれません。
2017年のカンヌライオンで、バーガーキングは「クライアントとしてさほど最低にならないために、どうすればよいか」について次の5つの項目を掲げていました。
① 自分のブランドを理解する
② 素晴らしいオリエンをつくる
③ アイデアの成長を止めない
④ リスクを背負わないことが、最大のリスクである
⑤ One Teamになること
One Team
ワールドカップラグビーでも盛んに登場した言葉「One Team」。玉手さんは、ここで4人がバケツリレーをしている絵を使い解説していきます。
① 4人全てが「火を消したい」という目的に沿って行動
② 4人のうち実際に火の前で水をかける人は「火を消したい」という目的をもっているが、水を渡す方は重いなぁ、こぼしたらいけないよなぁ、なんて思っている
③ 4人全員が、「火!? 火傷したくないなぁ、あの人、火傷したら切れるだろうなぁ」なんて思っている
ご自身の仕事で、あなたは今のバケツリレーのどの位置にいて、どんな想いで仕事をしているでしょうか。
ここでハズキルーペのCMの話に戻ります。
好き嫌いは皆さんあるにせよ、ハズキルーペの売上は拡大しています。目的は達成していますよね。ここをどう考えるか。
あなたは、クライアントが抱える「課題・困りごと」を本気で考えて仕事に取り組んでいますか?
クライアントと全く同じ目的でありすぎる必要はないけれど、課題解決を考えるプロのクリエイターとして、仕事に取り組んでほしい。
またそのコミュニケーション手法は、本当に「火を消せるのか=目的を達成できるのか」常に自問してほしいと思います。
ディファレントでシンプルなバリューを身に着けよう
また、目的を達成するために、あなたやあなたの会社のコアバリュー(中核となる価値)を磨き続けてほしいと思います。そしてその際に、Better(測定可能で、消耗戦に巻き込まれるような(例)糖質50%offのビール⇒80%、100%offと各社競合してくる)よりも、Different(尺度がない、測定不能なもの(例)砂糖不使用のコーラ)を目指し、模倣の可能性が少ないものを目指してほしい。
玉手さんは言います、「先ほどのバケツリレーで先頭に立って火を消しているのがクライアント=事業会社とすると、皆さんは水=(企画やクリエイティブ)を汲み上げ、広告会社に渡し、それがクライアントに届いて、火を消しているわけです。でも先頭の私がポンコツだと火は消せません。また間に入って私に水を渡す人が駄目でもいけないわけです。
さあ、こんなときどうしましょう。
そのバケツリレーに参加しないのも方法です。大人はなかなか変わらないですから。
玉手さんは、大前研一さんの言葉を紹介しました。
人間が変わる方法は3つしかない。
1番目は時間配分を変える。
2番目は住む場所を変える。
3番目はつきあう人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。
最も無意味なのは『決意を新たにする』ことだ。
【出典】大前研一 名言集
毎回同じところで、同じ人と、同じことをしていて、違う成果を求めてもそれは難しいし、いやいややっているとか、やらされているようでは変わりようがない。何かのための時間を新たに設け、新しい一歩を踏みだし、新たな人と新しい仕事をしてみるのもお勧めします。
最後に質疑応答にて、事前に寄せられた質問に玉手さんはこう答えていました。
その後も会場で出た質問にお答えいただき、セミナーは終了。
その後、玉手さんを囲んでアサヒスーパードライで乾杯し、交流会に移りました。
スーパードライ、美味しゅうございました。