今回は、中学校1校、高校31校、
高等専門学校1校、専門学校7校、大学20校の60校より、
過去最高となる1,016点の応募をいただきました。
厳正なる審査の結果、以下の作品が見事
受賞いたしましたのでご覧ください。
自由な発想で自ら課題を設定し、
自らその解決策を考える。
作品は「虫眼鏡マーク」をクリックで
拡大してご確認いただけます。
関西大学 3年辻井 舞優消える横断歩道
信号や横断歩道(交通事故対策)のアイデアは毎回多数寄せられています。
柵が出てきて横断できないようにしたり、プロジェクションマッピングを用いたりと様々です。
横断に関しては、歩行者とドライバーがルールに則った信頼の上に成り立ちます。アイデアの多くが、「信頼できない」を前提に取り組むものが多いのですが、このアイデアでは、歩行者、ドライバーの心理面への働きかけを促しています。信号と連動させ点灯→点滅→消灯と連続し、特に点滅での信号機と横断歩道の両方での注意喚起、そして横断歩道が消えた際のドライバー心理の面では有効と思いました。もちろん、それでも飛び出しなどはあるかもしれませんが、双方に対する注意喚起の側面では一歩前進だと思います。
なお、現状ではコスト面が気になるところ。試験的にでも一度見てみたい横断歩道です。
HAL東京 3年大吉 悠介おとなのしっぽ
子ども用ハーネスが、「子どもをペット扱いしていうようだ」など、見た目が悪いし批判的な声が多い。そこに目を付けた、逆転の発想。「手をつなげばいいじゃん」なんて思う方もいらっしゃるでしょうが、2〜3歳などは、ひょいと手を離し、目を離した瞬間に予想外の行動を取ったりします。しかも子どもは熱中すると周りに目が向けられないのが現実。学生の皆さんは子どものころどうだったでしょうか?親も細心の注意は払っています。突然走り出したら追っかけるし、信号機では手をつなぎ、赤・青の区別を教えたりと、親は親なりに頑張っています。そして子どもは小さな冒険をしたいもの。その上で何かあったら親の元に帰れる安心感も持っていたいものです。さて、この逆転の発想のアイデア、適度の長さの「おとなのしっぽ」だと、手をつないだ感覚で歩けるかもしれません。子どもがほんの小さい時だけの使用でしょうが、面白い発想だと思いました。
東京都立武蔵野北高等学校 1年野口 雄矢 / 鈴木 要 / 金谷 拓和 / 西村 梨那 / 小林 真緒M-1の「トップバッター」を救いたい
面白いアイデアですね。自ら課題を探し、自ら解決策を考えるとなると、社会的な課題に目が向きがちだと思いますが、これは本当に日頃思っていることでしょうね。本気で思っているからこその発案だと思います。
もちろん毎回M-1ネタばかりだとこちらも困りますが、身近なことだからこそ本気になれる強さがあります。
今回も多くの学校が授業として取り上げてくれました。でも、課題だから提出しなくちゃ!と、やらされている感が強いと、本気度も薄れがち。常に問題意識を持っていることだと、それが頭の中にあるので、ひょんなことをきっかけとして、解決策が出てきたりするはずです。日頃の想いが大事なことを再認識させてくれたアイデアです。
愛媛県立伊予高等学校 3年越智 彩希珍味を“おつまみ”から“お菓子”へ
「じゃが&いりこ」。カルビーの「じゃがりこ」をもじったアイデアか、面白いけど・・・・・・。と、企画書内の文章にあった松前町(まさきちょう)を調べてみると、珍味発祥の地とか、松前町唯一の地場産業として年を追う事に発展し国内では小魚珍味の大半を生産・・・・・・などの文字。この辺りの情報も、記してもらえると読む方は「それでか!」と更に納得するはずです。例えば「まさきの珍味をお菓子へ!地場産業の活性化」なんてタイトルで、愛媛県松前町は全国の珍味生産の大半を占めています。さらにこの地場産業の発展のために・・・等々、とした方が伝わる速度は速くなるはずです。今後は伝え方もご考慮下さい。また、実現化にあたっては、カルビーさんに了解を取るなり、一緒に開発するなり、後々問題にならない配慮も検討です。
しかし、一度食べてみたい!いりこの味付けも気になるところです。学校として、松前町役場に相談してみるのも良い経験になるかもしれませんね。
HAL名古屋 4年楠 陽子長時間座るとだんだん低くなる椅子
だんだん低くなる椅子。カフェの長時間利用トラブル解決策ですね。確かに実際に低くなった椅子に座っている光景は、ユーモラスでもあります。ただ、アイデア内の「お客様は椅子の脚についた緑のボタン」を押してスタート。確かにボタンを押す行為で、自ら納得して時間を知るのであれば良いのですが、押す人の割合がどうなのか気になるところです。また、ボタンではなく、座ったことに反応して低くなる場合を想定すると、トイレなどに行った際はどうなるのだろう?この辺りの仕組みも更に検討していく必要はありそうです。
また、お客さまに納得して使ってもらうための告知方法も課題です。
と、アイデアに対する課題はいろいろありますが、絵にあるように「低くなる」というアイデアを思いついたのは面白です。今後は使用者側(ユーザー目線)での磨きをかけていってください。
滋賀県立大学 2年脇 捺夢回転寿司のコップを衛生的に利用するアイデア
本コンテストの募集を始めてから、回転寿司屋さんなど飲食店での悪質なイタズラ映像がSNSで拡散されました。困ったものです。そんな矢先のこのアイデア。確かに、自分の飲み口がどこか、わからなくなりがちです。そこでそれを解決するアイデア。なるほどな、と思いました。ちょっとしたことかもしれませんが、自分事として考えた、その視点からのアイデアだと思います。まあ、飲食店での悪質なイタズラはSNSを通じて目立とうとする気持ちからでしょうが、見ている方は不快!ましてや飲食店ですので、心身ともにリラックスした、快適な場でありたいですね。
愛知教育大学附属高等学校 1年火石 愛美ヘルプマークを分かりやすく
どのような疾病や障害があるのか、その判断に役立てるためのヘルプマークのアイデアも多く集まりました。中に、QRコード付きのものがあり良いと思ったのですが、既にQRコード付きのヘルプマークは存在していました。さて、このアイデアでは、第三者が視覚的に情報をインプットしやすい方法を探っています。
あとは、使用するご本人の心理的側面やプライバシーの側面をどう考えるか。人によっては、ヘルプマークをつけるのは良いが、具体的な障害を知られたくないという方もいるかもしれません。また、障害を明らかにすることで、それに付け込んだ犯罪に巻き込まれることを恐れる方もいるかもしれません。
人それぞれで考え方に差異はあるでしょうが、自分で納得してこのヘルプマークを使えたら良いですね。
また、ペースメーカーを付けている方の側でスマホをいじっていた人が、その方から注意を受けている光景を目撃したことがあります。調べるとペースメーカーとスマホは15p以上離して使用してほしいという指針もあるようです。そのような知識を共有できる案内なども必要かもしれません。
山梨県立吉田高等学校 2年武藤 彩聖AIホーム
IoTに関するアイデア。既に家電メーカーなどでアプリを活用して実用化しています。また2022年10月には東京都水道局でも使用料がわかるようにアプリを開発・運用していますし、各機器に対応して遠隔で消し忘れに対応したりと用途も多方面に渡っています。今回の応募の中にも、節水に絞ったもの、節電に絞ったものなど、「見える化」を考えたものが多数見受けられました。本アイデアはそれを網羅したカタチでしたので、代表して選出しました。またIoT絡みでいうと、一人暮らしとなった高齢者の方を遠くに住む家族が見守れるように、毎日使うポットや冷蔵庫の使用状況をスマホに届けてくれるサービスもあります。今後ますます、IoTが進化し、スマホとの連動性をもった家電製品やシステムが多くなることでしょう。
山形大学 3年熊谷 信人 / 熊谷 翔 / 安藤 海翔真ん中に乗らせるエスカレーター
エスカレーターの問題は、毎回寄せられるアイデアです。従来は、互い違いに乗らせる方法やクイズやアンケート形式で左右の乗り位置を決めるなど、様々な意見が寄せられています。このアイデアは、足跡マークを真ん中にドーンと設置するもの。アイデアとしてはいさぎよい。実際どうなるかを見てみたいとは思います。
なお、行動経済学でいうところのナッジ理論(人を強制することなく良い選択へ誘導する)ですが、もしかすると真ん中の足跡マークの存在は、ある意味強制しているように思われるかもしれません。後ろを気にしつつ、乗り心地が悪いとなるのかどうか。
さて、エスカレーター問題はどこに視点を置くかで変わってきそうです。片側に立つことは本当にいけないのか(隣に知らない人がいるのは、心理的にどうなのか)。片側を歩くことは本当に事故につながりやすいのか。一段に二人が立てる構造のエスカレーターが多いが、一段に一人のみのものだとどうなのか。考え方は人それぞれですし、また国によっても考え方は違うようです。この問題も、本当に「自分事化」して考えてみることが大事な気がします。
全体講評
今回はアイデアとしては良いものが多く寄せられました。が、思い至ったアイデアが真似ではなくとも、既に世の中に存在するものが多かったのも特徴です。
〇 タッチレス改札
〇 伝統工芸とガチャ
〇 診察券の統合アプリ
〇 介護・保育施設の統合
〇 パチンコ型デイサービス
〇 Doctor AI
〇 冷蔵庫とスマホの連動
等々。これからもっと普及したら面白いものもあります。
また、ペットボトルのキャップを分別して回収するために、ペットボトルの回収ボックスの上に透明の蓋を被せ(一部空いているところから)蓋の下に描かれたカーリングの的をめがけてキャップを弾く「キャップカーリング」など、人間の心理面をついた作品。物の角に足の指が当たり、痛い思いをするのを無くしたい!などのユニークな作品も寄せられました。
このコンテストは「自ら課題を考え、自ら解決策を考えること」を身に着け、習慣化することが狙いです。
今まで思いもつかなかったアイデアが寄せられると嬉しいわけですが、思いついたアイデアが既に世の中にあったとしても(皆さんが学校の課題だから真似をして提出した!だと困りますが)、あなたが良いと思ったことなら、まずはOKです。但し、今後は思いついたアイデアが世の中に存在するものなのか、調べてみましょう。そうそう、この調べるのも、今はネットが中心だとは思いますが、どんな語彙を用いて検索するかでも出方が違います。これもネット時代の訓練なのかもしれません。
人間が想像できることは、実現する。という言葉もありますが、自動車、飛行機、機関車、電車等の発明は、物理的時間の短縮を実現し、様々な恩恵をもたらし(二酸化炭素量は増えましたが)、コンピュータの発明はビジネスや医療などにも貢献、メタバースは障害を持った方でも働ける環境を生み出していくかもしれませんし、まだまだ様々なものが出てきそうです。
各作品の講評の中でも述べましたが、本当にその課題は自分にとって解決すべきものなのか。
「自分事化」できるものなのか。その辺りを考えてみることも必要かもしれません。
また、ある課題を常に考え続けていると、様々な経験や全く関係のないことからもヒントを得られるものです。
今後も、まずは「自分事化」できる何かを見つけ、そのことを考え続けてみてください。また、それをどう伝えるか、このコンテストはA3/1枚の企画書ですが、伝わるにはどう表現したら良いか、そんなクリエイティブな側面も大切にしてください。こちらも出来るだけ、深読みしながら選考していますが、例え良いものでも伝わりにくいと、その良さも見逃してしまうかもしれません。
さあ、これからも様々な課題を「自分事化」し、想像力を膨らませる旅は続きます。皆さんの活躍をお祈りしています。
ご応募、ありがとうございました。
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