今回は、中学校10校(前回1校)、
高校66校(前回31校)、
専門学校9校(前回7校)、
大学16校(前回20校)の
101校(前回60校:前回比168%)より、
685点の応募をいただきました。
厳正なる審査の結果、以下の作品が受賞いたしましたのでご覧ください。
自由な発想で自ら課題を設定し、
自らその解決策を考える。
作品は「虫眼鏡マーク」をクリックで
拡大してご確認いただけます。
日本工学院八王子専門学校 1年二上 朱音エレベーター開閉ボタンを分かりやすく
どっちだっけ?と、意外に悩ましく思っている人は多いかもしれません。ちなみにこれを書いている私は子どものころ、例えば今現在は3階にいて、6階にエレベーターがいるとします。私は10階に行きたいのですが、
上へ行くボタンを押さず、下のボタンを押しました。先ずは6階にいるエレベーターが下に来てほしいから。
これは心理的な側面ですが、このボタンは見た目が一瞬わからないわけです。開けるボタンを見て閉まっていると感じる人もいることでしょう。何気ないことで、日頃思っていても忘れがちなところによく目が向きました。
今までで初めて取り上げられたアイデアという視点を評価しました。
なお、同じ課題についてネット上にもいろいろなアイデアは載せられていますが、閉める際のアプローチは見かけませんでした。今後も利用者の立場に立って有効な解決策を日頃から探ってみてください。
女子美術大学短期大学部 1年北村 彩葉子供のナースコール利用促進
こちらのアイデアも利用する立場の視点で考えられています。確かに子どもの頃の入院は、それは不安だと思います。また、ここでは緊急時でない時に、ボタンを押す子どもがいると書いていますが、逆に気を遣う子どももいることでしょうし、大事な時に押せないこともあるでしょう。そこで「気持ちを伝える3つのボタン」が役立ちそうです。なお、対象とする年齢や男女差なども考慮したデザインが今後は必要かと思います。
視点とアイデアは良いので、これをどうデザインに落とし込めると良いのか、今後も様々な場面で考えていってください。
香蘭女学校 高等科 3年加藤 乃絵奈光合成する藻の繊維!
よく考えられたアイデアで、しかも実験や検証がされている。ということで、まずは残したアイデア作品ですが、調べると「マリンチャレンジプログラム(2017年度から、海・水産分野・水環境にかかわるあらゆる研究に挑戦する中高生研究者を対象)」2022で優秀賞を受賞しているアイデアでした。さて、通常だと外すところですが、アイデアの伝え方も上手いし、実際にこのアイデアの実現に向けて、企業や大学と動いている点を、応援したい!という審査員の声で受賞作としました。まだまだ課題は多いと思いますが、廃棄できるという点を守りつつ、生産や使用部分について深掘りできたらいいですね。楽しみながら進めていってください。
大阪府立日根野高等学校 2年宮井 心春脱遅刻プロジェクト
このアイデアは、学校の遅刻を減らすことを「自分事」化して考えた点を評価しました。
また、アイデア作品の中には、ある事柄について罰則を強化するなど、他人事として考えるものも多くあるのですが、ここでは罰則が増えても根本的な解決にはならないという視点があります。
さて、アンケートを取るところは良いのですが、そのアンケート項目などはもっと吟味したほうがよかったかもしれません。仮説の立て方も、生活習慣の悪さに至る原因なども探れたら良かったかもしれません。
また、朝食はもちろん大事ですが、提案されたアイデアもその原因からもっと出てくるかもしれません。
今後は本質を探り、そこからアイデアを導いていくことを考えてみてください。
新しい革新的な音楽サブスクリプション
ご自身の好きな分野だけに、よく考えています。音楽配信に関わる原価構造なども調べています。アーティストの収益を上げたいという想いは納得ですが、現在の配信では1曲150〜250円当たりが主流のようで、アイデアにある1曲5円として・・・は逆にアーティストへの還元にも問題があるかも。でも、こうやって調べて利用者もアーティストもそして配信事業者も満足できることを考えることは、今後に生きてきますよ。
きょうだい児支援
「きょうだい児」知らなかった言葉です。重い病気や障害を抱える兄弟姉妹がいる子どものことだそうです。
確かに引け目に感じたり、いや頑張らなきゃとか、いろいろな想いが交錯しそうです。理解を増やすことは大切ですね。
Ring-Ring Pets
2024年1月1日の能登半島地震。被災ペットの存在。ペットの避難を登録制で・・・というアイデア。 確かにこの問題はついて回ります。問題は、いつどこで震災が起きるかわからず、出来れば近くで避難させたいが、全域で被災しているとどうするか。またすぐ移送できるのか。継続して考えていくべきことかもしれません。
鏡姫
白雪姫の鏡のように褒めてくれる。なるほど、と思って調べると2014年にIKEAがMotivational Mirrorという褒めてくれる鏡を開発。PR目的で、ロンドンの店頭に設置していました。その後の情報は無いので、確かに家庭内となると、毎回同じ内容だとつまらないわけで、AIが更に顔色や目つきなど様々な情報を読み取れるようになると、褒めてばかりではいられないかもしれません。
盲導犬ロボット「あいドッグ」
盲導犬希望者に対して盲導犬の不足。盲導犬の受け入れ拒否。現在、全世界でその開発に取り組んでいるようです。犬型ではなく、スーツケース型など、目的に即した内容で取組みは進んでいるようです。
このアイデアの作者も、高校で実際に研究している様子。犬のカタチにこだわることなく、目の不自由な方が快適に歩ける、移動できることを目的にこれからも研究・開発に取り組んでみてください。
カラオケお悩み解決「ROLLER TABLE」
カラオケ中に、飲み物が運ばれ、恥ずかしく歌を中断。そんなことが無いように、壁に穴を開け、回転ローラーを設置。お店の方が、そこに飲食物を置くシステム。なるほど!と思いつつ、壁の幅はどのくらい必要で、外に音が漏れないようにもしなくてはならず、課題もありますね。
忘れられたリコーダーに新たな命を
なるほど、リコーダーは多くの家庭に眠っていそうです。処分はプラスティックゴミか可燃ごみのようですが、地域によって異なるようです。このアイデアは、リメイクして活用するものですがまだまだ考える余地がありそうです。また他人が使ったものだから嫌がる傾向にあると思いますので、完璧な洗浄等が出来れば寄付など、再利用してもらう方法も検討ですね。しかし、リコーダーに目を向けた視点は良いですね。
留学をもっと身近に!Relocate Easily
海外から日本に、日本から海外に留学する学生向けのマッチング・レンタルプラットフォーム。日本から海外での生活、一人暮らしの学生は家具等の一時保管場所が必要。海外からの留学生は逆に家具等が一時的に必要。なるほど、そうです。実際には、家具を実家に移動したり、貸倉庫に預けたり、売ったり、アパートを解約したりと色々とありそうです。各大学内で、専用サイトが設けられると良いかもしれません。
防水ケース付き折り畳み傘
水筒に傘を収納するイメージのもの。なるほど、ボトル型で、カバンの中なども良さそう。と、調べると既に製品がありました(ITSUMOスリムボトル折りたたみ傘)。そうなんです、良いと思っても既に世の中にある場合があります。思いついたら調べてみましょう。「知らなかった!」ということも結構あります。でも、こうやって世の中の「負」を解消しようとする考えは大事です。またデザインで解決しようとする姿勢は今後も持ち続けてくださいね。
地域を活性化するためのヒット商品開発
神奈川県鶴見区にある「沖縄南米タウン」を更に発展させるために、食のヒット商品を開発したい。と、沖縄や南米の素材を使い、実際にお菓子などをつくってみたアイデア。この熱意は大事です。ただし、沖縄南米タウンを盛り上げることが本来の目的ならば、食は地元のお店の方と共同で開発するなど独りよがりにならないようにもしたいものです。また、食品以外の別のアイデアも出てくることでしょう。食を自分で提供したい想いが強ければ、また違った方法もあるとは思います。この辺りは自分との相談ですが、まずは出来るところから始めてみるのは良いことだと思います。
香害を解決する「マイクロカプセル測定器」
化学物質過敏症の増加。柔軟剤などの強い香りを感じると、かゆみやじんましんが出る人もいるそうです。
ほぼ無自覚で加害者ともなってしまうので、その測定器があればというアイデア。しかし匂いは人それぞれで、伝えるのが難しいという課題も。ここまでの課題意識は良いです。しかし、測定器を使ったその後がまた課題。自分では好きな香りだと余計に難しいですね。しかし、このようなことで実際に悩んでいる人がいると、知ることは大事ですね。
全体講評
このコンテストは「自ら課題を考え、自ら解決策を考えること」を身に着け、習慣化することが狙いです。
今まで思いもつかなかったアイデアが寄せられると嬉しいわけですが、思いついたアイデアが既に世の中にあったとしても(皆さんが学校の課題だから真似をして提出した!だと困りますが)、あなたが良いと思ったことなら、まずはOKです。但し、今後は思いついたアイデアが世の中に存在するものなのか、調べてみましょう。この調べるのも、今はネットが中心だとは思いますが、どんな語彙を用いて検索するかでも出方が違います。これもネット時代の訓練なのかもしれません。
今回も、ゴミ問題(ゴミ箱のあり方)、誹謗中傷SNSの問題、電車のつり革、交通安全、自動販売機のあり方、エスカレーターの左右問題、車椅子の方のバスの乗り方等々、共通した課題も寄せられています。また、2024年1月1日の能登半島地震を受けての防災に関するものも寄せられました。
各作品の講評の中でも述べましたが、本当にその課題は自分にとって解決すべきものなのか。
「自分事化」できるものなのか。その辺りを考えてみることも必要かもしれません。
また、アイデアを思いつき、これが実現したら社会はより良くなると思ったら、本当にその世界が展開できるのか様々な場面を想像してみてください。すると、まだまだ課題が出てくるかもしれません。
そこで、その課題を解決するために行きつ戻りつすると思います。
出来ればアイデアが浮かんだら、誰かに見てもらうことも必要かもしれません。
これが良いと思っても、客観視するとまだ課題の解決に至っていないなど、見えてくると思います。
今後も、まずは「自分事化」できる何かを見つけ、そのことを考え続けてみてください。
常にある課題を考えていると、様々な経験や全く関係のないことからもヒントを得られるものです。
また、それをどう伝えるか、このコンテストはA3/1枚の企画書ですが、伝わるにはどう表現したら良いか、そんなクリエイティブな側面も大切にしてください。こちらも出来るだけ、深読みしながら選考していますが、例え良いものでも伝わりにくいと、その良さも見逃してしまうかもしれません。
さあ、これからも様々な課題を「自分事化」し、想像力を膨らませる旅は続きます。
皆さんの活躍をお祈りしています。
ご応募、ありがとうございました。
公益社団法人 日本広告制作協会