今回は元トヨタマーケティングジャパン社長の高田氏を講師としてお招きし、オープンセミナーを開催した。
冒頭、かねてより高田氏と交流の深い鈴木理事長から挨拶があり、高田氏の経歴と人となりを紹介いただいた。それを受けた高田氏が登壇され、リラックスしたムードの中で今回のセミナーがスタートした。
セミナーのテーマは「グローバル化とクリエイティビティの方向」。
■世界情勢の変化
トヨタの生産販売台数等の数字をベースに、これまでの企業のグローバル化について考察。特に90年代から急激に加速した「本格的なグローバル化」、そして2007年の生産ピークからリーマンショックを経た現在までを細かく分析し解説された。これまでの特徴であった経済のグローバル化(ヒト、モノ、カネ)に加え、2000年以降の特徴はインターネットの普及による情報のグローバル化であり、情報の双方向化によって質的に大きな変化があったことを重点的にお話しいただいた。
また、アナログメディアとデジタルメディアの比較をもとに、インターネットがいかにコストをかけずに誰でもが全世界へ情報発信できる時代になったかということを説明。実際に2011年度までの広告媒体費のメディア別推移、日本におけるメディア別接触時間等について、興味深い資料が続いた。
メディアが変化すると同時に、ハードの発展によりスマートフォンが普及しいつでもどこでも気軽にインターネットにアクセスできるようになった。更にソフトの発展によりFacebookやTwitter、LINEといった双方向性をもったSNSが登場し、これまで企業が情報を発信しユーザーが情報を集めていた時代「大衆の時代」から、ユーザーが情報を発信し意見を言い合う時代「個衆の時代」に、情報の広がりの変化があった。これらがマーケティングに与える影響は大きく、現在においてはソーシャルメディアはマーケティングの重要な柱となり、ソーシャルメディアを効果的・効率的に使う工夫が必要だと述べられた。
■トヨタの取り組み
従来は地域、国ごとのマーケティングをし、個別にコンテンツを作成し使用していたが、グローバル化となった現在では、他の地域や国でも同じように理解し混乱させないかが課題となり、従来方式の是非について検討する必要が出てきた。HyundaiやFordといった競合他社においては既にグローバルブランド管理における取り組みがなされておる中、トヨタが出遅れているというような状況であったが、各国で個別に行ってきたマーケティングを統一すべくトヨタブランドフォーラムを立ち上げることになった。
このブランドフォーラムには全世界のマーケティング責任者と現場責任者が出席し、トヨタの広告やプロモーションにおけるブランド統一を図るべく2015年までのロードマップを策定しているとのこと。
■トヨタの具体的事例
一方で、「FUN TO DRIVE, AGAIN」や「Reborn」といった日本国内で流されているCMについては、前述のグローバルマーケティングに逆行していると思われるが、なぜ今、このような展開をしているのか?それは金融危機や品質問題、東日本大震災やクルマ離れ問題といった相次ぐ課題を克服する為、トヨタの企業イメージを回復すべく投入されたものである。特に震災以降、消費者の商品選択基準はより企業姿勢重視へと傾いている状況の中、日本を元気にするためにはグローバルの流れに逆行したとしても日本をターゲットに絞ったコンテンツが必要と判断した。
また、日本のクリエイティビティが世界に関心を持たれている好例としてオーリスのCMを紹介。You Tube に掲載され再生回数1000万回を超えるヒットになったが、評価は各国での市場ポジショニングや文化の違いに起因し、その評価は国によりマチマチであった。
しかし刺激的な内容であったことも含め、多くの国に意図通り伝わるくエイエイティビティは有りだという認識を持っているとのこと。
■今後のコンテンツに求められるもの
以下の3つの軸をあげられた。
1. 企業・商品・サービスのファンのコミュニティ作り
2. 「社会貢献を啓蒙する良いプロパガンダ」or「社会貢献活動そのもののプロモーション化」
3. (これまでも行われていた)「おもしろい広告」
Red Bull や V.W. , AMEX, P&G などの具体的事例やCANNES LIONS 2012を紹介し、その有用性について語られた。
また最後に、高田氏の好きなスポーツのジャンルから、2011年のJ2からJ1昇格直後の年間初優勝を決めたサッカーの柏レイソルを事例にあげ、監督を含めチームが極めてクリエイティブな発想で優勝したと力説。「クリエイティビティほど人を動かす大きな力はない!」という言葉で講義は終了となった。
トヨタのマーケティング戦略のトップを務められた高田氏ならではの視点と分かりやすい内容で、ブランディングとクリエイティビティについて改めて学ぶことの多い講義となった。また軽妙な口調とユーモアに溢れたトークで、来場者にとっても非常に充実した内容のセミナーとなったはずである。
今回は時間が押してしまったため、質疑応答の時間は設けず閉会とした。
以上。
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◆次回は、11月6日(火)18時より3331 Arts Chiyodaにて「面白法人カヤックのビジネスモデル」と題し、カヤック代表の柳澤氏をお招きしてセミナーを開催予定。
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