「日本の子どもたちの今を知り、どうあるべきかを考える」 |
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講師 |
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NPO法人「スリーキーズ」代表の森山誉恵(もりやまたかえ) |
開催日 |
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2016年7月5日(火) |
会場 |
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セットインターナショナル会議室 |
参加者数 |
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14名 |
7月の経営部会は、自社の業績向上やビジネスチャンスをめざしてともに学び情報交換をしてきたこれまでの内容とは少し目線を変え、「日本の子どもたちの今を知り、どうあるべきかを考える」という公益社団法人らしいテーマで社会を考える場としてみることにした。 講師として、チャイルドセーフティネットの充実化をめざすNPO法人「スリーキーズ」代表の森山誉恵(もりやまたかえ)さんをお招きし、お話をうかがった。
スリーキーズは、家庭の貧困や虐待で学校に通えなくなった子どもたちへ支援を続ける団体。貧困ばかりでなく、家庭内暴力で学校に通う意欲を無くした子どもたちや、大人の都合だけで学校に通えなくなった子どもたちなど、日本の子どもたちの現状を知り、どうあるべきかを考える機会になるのではないだろうか。
児童の貧困
現在、虐待で命をなくす子供は 1年間で約 150人にのぼり、東京都において施設で暮らす子供の数は約 4,000人おり、全国では約 5万人とその数字は年々伸びている傾向にある。 その理由のひとつとして、親の子育て負担が思い社会になっているという環境が大きい。親の仕事漬けによるストレス、孤独、家庭内暴力、貧困といったことが、育児放棄や虐待へと繋がり、なかなかこの悪循環から抜け出すことができない。これらに起因する児童虐待数はこの 20年間においてはおよそ 70倍ほど増加しており、直近のデータでは約 9万件という膨大な数字となっている。
スリーキーズの立ち上げ
森山氏がスリーキーズを立ち上げるきっかけとなったのは今から 8年前、学生時代に塾講師や家庭教師の経験を活かして施設に行った際、それらの施設で出会った子供たちの現状の厳しさを目の当たりにしたことであった。施設や学校において子供を支える教師や保育士の数が圧倒的に少なく、公立中学校での教師一人に対する児童数は OECDでは平均 23.6 人のところ、日本では 32.6人。施設にも学校にも、フォローアップの体制がないのが現状である。また、施設に保護されたとしても厳しい現状がなくならないわけではなく、特に求められる勉強等へのサポートが低いために施設退所者の最終学歴は、4年制大学卒がわずか 4%と少ない状況にあり、これを何とかしたいと思った。
事業展開 2009年〜
施設に保護されたらそれで終わりということにせず、当時の学生仲間を集めて勉強サポートを開始、年間 140名の子供たちに学習支援活動を行うようになった。教える学生側にもきちんとした理解を持って臨んでもらうため、相互コミュニケーションや研修を実施したり、悩みを解決するために面談や個別相談等も並行して行った。 そういった活動を続けていくうちに徐々に対応できる施設数も増えていき、その話を聞いた多数の施設や支援団体から相談が寄せられる容認なっていった。一方で、こういった勉強サポートは「塾代」に値するという見かたもあり、行政的には「教育」と「福祉」のはざまで予算はなかなか取れない状況にある。しかし教育に触れる機会を得られないがために、中卒や学校中退や、ホームレス化や望まない水商売等に身を置くようになる子供たちを防がなくていいのかという強い思いがあった。
事業展開 2011年〜
行政だけではできないことを民間の力で推進してゆくべく、NPO法人として立ち上げることになった。森山氏自身も現代ビジネス Web版にコラムを寄稿したり、セミナー開催や寄付集め、研修・制作提言といったことを積極的に発信していくようになる。こういった活動が徐々に実り始め、2009年時には 3施設しか対応できていなかったのが、法整備ができた 2015年にはその数が6倍に、寄付者数は延べ約 450名、法人寄付は延べ約 40社、ボランティア総数は延べ約 850名と、規模を拡大することができるようになっていった。
事業展開 2014年〜
しかし、施設保護後の支援は充実するようになったが、子供への虐待数は年々増える一方であった。親からの虐待、援助交際をやめたい、どこに相談したらいいか分からないといった子供の声は後を絶たない。地域の支援に集まるのは意識の高い貧困層であって、一番困っている子供にはなかなか届かない現状に対応するべく、オンライン相談や支援機関への橋渡しをする相談窓口と、支援サービスの検索サイトを立ち上げた。それが Mex(ミークス)であり、東京にある約 60の支援サービス等に、年間 1,200人が繋がることが可能だ。スリーキーズ直営の相談窓口の利用者数は年間 5名〜 30名程度、それぞれの平均対応機関は約 70日程である。Mexの主なカテゴリは、いじめやひきこもりなど家族や学校の問題、学習支援や就労について、犯罪被害やこころとからだのケアについて等、大きく6つあり、それぞれの項目から支援機関へつながることができる。主に 10代の子ども達が対象だが、より使いやすい HPを目指し現在リニューアルを検討している。
40代以上の支援者への広報協力
今回 OACで講演する機会を得るにあたって、実現可能であれば下記の事も相談したい。
- ・支援者のほとんどが 30代以下。子育てに入ると支援継続が難しい。
- ・オンライン以外でスリーキーズの活動をもっと知ってほしい。
- ・タウン誌、コミュニティ誌などでの広告枠確保やタイアップ記事など。
- ・ポスター等を掲載できる場所の提供。
- ・寄付加算ができる自販機の設置。
- ・滞在が必要なときの宿泊先。
森山氏が学生時代に立ち上げたスリーキーズは、親や家庭の状況によらず、すべての子どもたちが社会から孤立することなく安心・安全に暮らしていけることをその理念として活動している。当初は小さな活動から始まったが、森山氏の子ども達への熱意が現在もその活躍領域を広げ続けている。今回、OACの経営部会においてこのような社会貢献活動について勉強する機会は恐らく初めてであったかもしれないが、普段情報交換をしているビジネスとはまた違う面から社会問題を理解するひとつのきっかけになったのではないだろうか。公益社団法人に在籍する我々だからこそできる、デザイン・クリエイティブ面においての支援活動がもっとあるのではないだろうかと考えさせられた貴重な講義となった。
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