「クリエイター社員の可能性を信じて新領域進出へ
~新規事業ECサイト LILI et NENE(リリエネネ)の挑戦~」

  • 開催日時2023年4月18日(火)16時~17時30分
  • 場所株式会社スタヂオ・ユニ(ビックスビル共有会議室)
  • 講師佐藤昭一氏(株式会社スタヂオ・ユニ 代表取締役社長)
    小笠原良子氏(株式会社スタヂオ・ユニ デザイナー)
  • 冒頭、65年に及ぶスタヂオ・ユニさんの紹介に続き、今回のテーマ「新規事業ECサイト LILI et NENE(リリエネネ)」のお話しに。

  • 当社の強みって何だろう。

    佐藤
    クライアントの内製化や紙離れなどが進み、当社の強みってなんだろうと役員で話し合いを続けていました。そこで、デザイナーがいてコピーライターがいて、撮影もデジタルも取り組んでいる。ここまでは、皆さんの会社と同じ。その強みをどう生かすか。この部分に関しては、数年前から百貨店ばかりでなく他の業種にも挑んできており、実績も出始めました。
    そしてもう一つ、百貨店の仕事をそれこそ60年に亘って携わり、ファッションのこと、モノの販売に関することは他には無い財産。
    この部分をどう生かしていくかも検討材料でした。

  • オンラインショップは出来ないだろうか。コロナ禍でのスタート。

    佐藤
    思い付きでオンラインショップをやりたいと思ったが実際のところです。そこには制作会社として生かせる要素が全て入っており、今まで百貨店の仕事で培った部分もあるし、今後に向けて実験的なこともできそう。そして、これは今まで経験のないリアルなお客様とのコミュニケーションも取れる。
    そんな折に、パリを中心としたヨーロッパの子ども服のオンラインショップを運営していた方が、その事業を継いでくれるところを探しているとの情報。前任の方は、この事業をきちんと継いでくれることを探していて、何社とも面談していた様子。最終的に当社が選ばれた。ということでM&Aでこの事業を引き継いだことになります。

    前任の時代は最高で1億くらい売れていたこともあったようですが、引き継いでからこの数年は、以下の売上高で推移している。
    2020年 3,700万
    2021年 5,160万
    2022年 4,700万

    スタート時がコロナの始まりとリンクします。
    2020年1月のパリに仕入れに向かい、帰る際にはコロナが本格化していました。
    なお、サイトを全面リニューアルするには概算で500万ほどかかりそうだった。しかし、そこまで費用はかけられないので前任の方のサイトをベースに、その中で工夫を施し、魅せるようにしました。
    また買い付け(仕入れ)に関しては、たまたま知り合いのスタイリストがパリに在住しており、彼女に依頼しています。またサイトでは通販以外に、スタイリストの彼女からパリの今(風景や花など)を味わえる情報を届けてもらい、コンテンツ化。
    またInstagramのストーリーズを週1回程度配信。このサイトのお客様はパリに憧れを持っている人が多いのも特徴です。

  • 子ども服のみに特化したのは、大人にとって子どもの成長は楽しみだから。

    お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんは、子どもの可愛い時期を楽しみたいと思うもの。
    まして女の子は小さい子でもファッションを楽しむ傾向もあるし、それならと女の子の洋服のみに絞って販売しています。

  • 価格競争なしない!

    昨年少し売り上げが下がったのは、物価高、航空チャージ、円安での仕入れ等々を価格に反映せざるを得ないため。子ども服はもともと価格が高い傾向にありますが、この傾向が続くと買う側も手を伸ばしにくいかもしれません。
    しかし、価格面の問題もありますが、それでも良いと思ったものは売れています。それ以上に日本のお客様の目は厳しいというのが、始めてみて感じたところです。そんな厳しい目を持つ日本のお客様に、納得していただける商品の提供と、そのファンになってもらうためのオンラインショップでありたいと思い、価格競争はしないで進めていくことにしています。

  • デザイナーだけど、チャレンジあるのみ!

    小笠原
    1996年新卒入社。就職氷河期。100社以上に履歴書。ことごとく断れ、ようやく入社。
    衣食住全て揃っている伊勢丹の仕事をデザイナーとして楽しんでいて、気付くと20年。
    そんなある日・・・・・・
    社長に声を変えられたのは、2019年11月。「ちょっとお願いしたい仕事がある」と呼ばれ、会議室に入ったら役員がずらり。そこで、子ども服のオンラインショップの店長をやってほしいと言われました。話を聞いて、単純に面白そう!と思いました。
    今までやってきたデザインも活かせそうだし、子ども服ということで、小学校にあがったばかりの子どももいるので自分の身近なもの。また従来のクライアント仕事ではなく、働き方も自分でコントロールできるかもしれないし・・・・・・と、せっかく声を掛けてもらったのでやってみることにしました。

    2019年12月の1カ月で、色んなことを覚えていきました。買い付けはどうする?輸入の際の、通関手続き、関税等々のルール、商品管理、価格の決め方、お客様対応・・・・・・。聞いたことのない言葉だらけ。
    今も試行錯誤を重ねながらですが、システム系担当・コピーライター・デザイン等現在社長を含め5人で対応しています。

  • 実際の商品もご紹介いただきました。

  • 小笠原
    また、服だけではなく雑貨も取り扱っていますが、この画面真ん中の金色の器を仕入れようとすると、佐藤さんから「こんな秀吉みたいな金の世界は売れないよ!」の言葉。
    でも「絶対売れる!」と思って仕入れ、蓋を開けると完売!生活雑貨は私のほうが強いと思ってます。

  • オリジナル商品の開発にもチャレンジ!

    パリの刺繡作家さんとコラボしたオリジナル商品づくり。スクールバッグ。


  • フランスにスクールバッグを持つ習慣は無いようなので、こちらからディレクションしました。
    肩から掛けられるようにするのは必須。また小学校の机のヨコにフックがあるので、それに掛けられる工夫。
    色々なものを入れるのでマチがあること。また、道具や運動着など入れられる丈夫さや、畳んでランドセルに入れられること。等々、様々な注文を出しながら開発していきました。

  • 佐藤
    小笠原の実体験からつくりあげたオリジナル商品。他にもオリジナルコンテンツを増やしていきたいと思います。
    またお客様サービスとして、上顧客にはクーポンや小物をプレゼントするなど、継続的なコミュニケーションを図る工夫をしたりしています。なお、インスタの反応が高いのですが、そこからオンラインショップに引き込むようにしています。なお、SNS関連につぎ込む広告(費)は、金・土・日に限定し、高くても1万5千円程度としています。日々の売上状況や、何が良く閲覧されているかなど、データに基づき、対応を考え、クリエイティブにも活かせる点は、自社で行っているだけに、面白いしやりがいにも繋がる部分です。

  • 小笠原
    昨年(2022年)8月と11月に新潟三越伊勢丹にて期間限定のShopを構え、実際の対面販売にもチャレンジしました。なかなか販売に繋がらなかったのが実際ですが、生の声を拾えたのは良い経験になりました。

  • 佐藤
    先ほどご紹介したインスタライブもチャレンジの一つで、定期的に行っています。小笠原は大人しいタイプで、あまり話すタイプではないと思っていたのですが、実際にやっているのを見て、「しゃべるようになったんだ」と驚いています。また接客も大丈夫。これって、自分たちのつくったものだからこそ、出来たのかもしれません。
    これまで、受け身の仕事が中心だったわけですが、いまの小笠原はクライアントとしての立場を経験しているのだと思います。自分たちで、つくりあげたものですから、自信を持って販売できるという想いもあるのでしょう。また、お客さまの声に耳を傾け、お客さまの立場でも考えられる。立場や仕事の内容で、人はここまで変われるのだと実感しています。

  • クリエイターは、もっと外に向かい発信できる

    佐藤
    オンラインショップを始めてみて感じているのは、デザイナーの小笠原のように何も知らない段階からでも、興味や好奇心というクリエイターならではの感性で、やり遂げることは可能だということ。先ほどお伝えしたように、大人しいタイプの彼女も、自信をもって自らつくりあげた商品だからこそ、接客でも、インスタライブでも対応できる。クリエイターにはそれが出来る可能性があると思います。
    会社のことでいうと、ただつくるだけではなく、コンサルに近い相談される会社でありたいと思います。
    OACでも一昨年、昨年と2度に亘り「デザイン経営」のセミナーを行っており、OACの会員社より一般企業の参加が圧倒的だったと聞いています。一般企業もデザイナーを採用したり、内製化を考えたりと様々ですが、我々OACの制作会社も今一度「デザイン思考」の考え方を見直していったほうが良いと思う。
    また、この業界全体を考えると、クリエイターの地位を向上させてきたい。企業の売上に貢献していくにあたって、対価もあげていければと思う。みんなで声を上げていければと思います。

  • 以上で、今回のセミナーは終了となりました。
    (本当は、生っぽい質問が飛び交ったのですが、そこは伏せておきますね)

  • 小笠原さん、佐藤さんありがとうございました。